博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

成瀬仁蔵の教育思想

成瀬的プラグマティズムと日本女子大学校における教育

定価: 15,950 (本体 14,500 円+税)
本書は、近代日本に独自な女子高等教育を試みた成瀬仁蔵の教育思想と実践活動を、キリスト教思想とW・ジェームズ的プラグマティズムを軸に包括的に分析した書。
【1994年2月初版刊行】

【著者略歴】
影山礼子(かげやま れいこ)
1947年生まれ。日本女子大学卒業。国際基督教大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。
教育学、教育思想史専攻。
国際武道大学教授を経て、現職は関東学院大学法学部教授。国際基督教大学、立教大学非常勤講師。
目次を表示します。
序論 研究課題とアプローチ
第一部 成瀬の思想形成過程と成瀬的プラグマティズムとしての〈帰一〉
    思想
 第一章 成瀬における伝統思想とキリスト教への転回―
     Selfishnessの否定(自己否定)と道徳的実践性
  第一節 思想的前史 
  (1)伝統思想―陽明学との関係 
  (2)父からの教訓 
  (3)中江藤樹における陽明学の人間観
  第二節 キリスト教(組合派)への回心と思想的革新 
  (1)沢山保羅との出会い 
  (2)入信の契機と回心 
  (3)キリスト教理解の内実―自己否定(罪の自覚)と愛他
    a)罪の自覚―自己否定 
    b)愛他と忍耐
  第三節 キリスト教実践の試み 
  (1)当時の思想状況とキリスト教 
  (2)浪花教会と梅花女学校―経営の独立自給主義と教育における宣教師
     の協力
  (3)成瀬の教育実践とその特質―自発主義 
 第二章 成瀬におけるプラグマティズムのインパクト
  第一節 アメリカ留学 
  (1)H.H.レヴイット家での家庭生活とアメリカ社会の印象
  (2)アンドーヴァー神学院(Andover Theological School)と
     クラーク大学(Clark University) 
    a)D.L.ムーデイの夏期学校―「愛」の感化力
    b)W.J.タッカーの社会学講座
    c)アンドーヴァー論争(Andover Controversy)と
      成瀬の神観の展開―キリスト中心のユニテリアニズム的傾向へ
  (3)女子大学創立の理想―「吾が天職は,教員にあらず,牧師にあらず,学者にあらず。社会改良者なり。女子教導者なり」
    a)女子教育の方針
    b)「女(子)大学ヲ設立スルコト」 
  (4)A Modern Paul in Japan(沢山保羅の伝記)の出版 
  第二節 成瀬におけるプラグマティズムのインパクト 
  (1)W.ジェームズとの出会い
  (2)W.ジェームズのプラグマティズム
  (3)成瀬の受けた思想的インパクト 
  第三節 梅花女学校校長から日本女子大学校設立運動へ
  (1)梅花女学校校長就任の経緯とその教育活動 
  (2)日本女子大学校設立運動―麻生正蔵と共に
 第三章 成瀬的プラグマティズムとしての「帰一」思想への展開 
  第一節 成瀬の「帰一」における人間観 
  (1)「帰一」の構造と特質 
  (2)「帰一」運動(Concordia Movement)に見られる主張 
  (3)キリスト教信仰に基づく「selfishnessの否定」による自他の共同
     の主張
  (4)「調和」「寛容」の内包する問題 
  第二節 帰一運動の試み―帰一協会(The Association Concordia)の
      設立 
  (1)当時の日本および世界の思想状況 
  (2)帰一協会の名称の由来とその国内外メンバー 
  (3)成瀬と渋沢の帰一運動の試み
    a)異質思想との対話 
    b)「帰一」の理解の問題 
第二部 成瀬の教育思想と日本女子大学校における実践 
 第一章 成瀬の教育思想における方針論と方法論 
  第一節 「主行主義」(プラグマティズム)に基づく教育の方針 
  (1)成瀬の「主行(プラグマ)主義(ティズム)」の教育原理 
    a)主体形成原理 
    b)「神の愛」による社会共同の原理
  (2)成瀬における教育の方針 
  第二節 「実践倫理講義」に見られる教育の方法と日本女子大学校に
      おける実践
  (1)「印(インプレッ) 象(ション)・構(コンスト) 成(ラクション)・発(エキスプレ) 表(ッション)」の学習法
  (2)宗教的生命(「信念」)の養成 
 第二章 成瀬の女子教育観の特質 
  第一節 日本女子大学校の創設 
  (1)当時の女子高等教育の状況 
  (2)創設の経緯 
  (3)創設期の教授陣 
  第二節 学科組織の構想に見られる成瀬の女子教育観の特質
  第三節 女子教育への国家的要請―良妻賢母主義の女子教育観との対比
  (1)国家主義的良妻賢母思想の登場
  (2)『女鑑』に見られる「良妻賢母」
    a)三輪田真佐子の女子教育思想 
    b)『女鑑』の成瀬批判
  (3)成瀬による新しい女性像の模索―『新婦人訓』に見る「賢婦」
 第三章 日本女子大学校における教育実践とその成果
  第一節 「主行(プラグマ)主義(ティズム)」の教育の実践 
  (1)カリキュラムに見る「主行(プラグマ)主義(ティズム)」
    a)部門選択制度と科目選択制度の採用 
    b)全体必修科目としての実践倫理講義と体育
    c)英語の教材による人間形成―Life(成瀬仁蔵・浮田和民・
      新渡戸稲造主幹)の発刊 
    d)人文史講座と科外講演の開講
  (2)学生生活に見る「主行(プラグマ)主義(ティズム)」
    a)学生自治組織―「係」
    b)全人教育の試みとしての寮舎教育―暁星寮と
      ブラックマー・ホーム(Blackmer Girls’Home)
     ①暁星寮とミス・フィリップス(E.G.Philipps)
     ②ブラックマー・ホームとミス・アズバン(C.M.Osborn)
  第二節 社会事業学部の創設
  (1)成瀬の社会事業教育構想の経緯
  (2)社会事業学部への結実
  (3)卒業生の社会福祉への取り組み
    a)谷野せつ(婦人工場監督官)
    b)三田庸子(女性刑務所長)
    c)大平エツ(女子少年院院長)
  第三節 生涯教育の試み
  (1)桜楓会
  (2)通信教育―「大(ユニヴァー) 学(シテー・) 拡(エキステ) 
     張(ンション)」運動
  (3)軽井沢三泉寮―夏期修養会
結語
成瀬仁蔵年譜
成瀬仁蔵著作・講演目録
文献目録
あとがき
人名索引
著者影山礼子 著
発行年月日1994年02月28日
頁数368頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-0879-4