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乳幼児の自己調整の発達過程と親子関係の歴史

親の「こうしないで欲しい」を子どもが聞き入れるようになる過程

定価: 8,250 (本体 7,500 円+税)
母親の願いと子どもの思いにズレが生じたときの相互調整過程を情動的交流の観点から検討。二者の思いと思いの絡み合いの様相をエピソードに写真を添えて多数収録。

【著者略歴】
塚田みちる(つかだ みちる)
東京都生まれ。
2004年 東京都立大学人文科学研究科心理学専攻博士課程単位取得後満期退学。
現在 中京大学心理学部助教。博士(心理学)。

専攻は、発達心理学。人の誕生から死に至るまでの生涯発達過程を周囲他者との関係において捉えるという関係発達論の枠組みの中で、それぞれの親子・家族の生きる営みに関与するという立場で研究している。
目次を表示します。
まえがき
第1部 問題の提示・先行研究批判・拠って立つ理論的立場
序章 本論文の基本的問題意識と本論文の構成
 1.本論文の基本的問題意識
 (1)親子間の思いにズレが生じるという出来事
 (2)印象深い出来事の意味としての“親子関係の歴史性”という視点
 (3)この二つの例より見えてきたこと
 2.本論文の構成
第1章 自己調整に関する個体能力成熟の視点
 1.社会的学習理論による考え方
 (1)社会的学習理論
 (2)行動規準による自己調整研究の動向
 (3)本節のまとめ
 2.動機づけ理論による考え方
 (1)動機づけられた行動の2種
 (2)内発的動機による行動の発達過程
 (3)内発的動機による自己調整研究の動向
 (4)本節のまとめ
第2章 自己調整に関する社会的相互作用の視点
 1.社会文化的理論による考え方
 (1)発達に対する社会文化的アプローチ
 (2)共同活動における言語の役割
 (3)共同活動にみられる大人の足場づくり
 (4)足場づくり研究の動向
 (5)本章のまとめ
第3章 自己調整に関する個体能力の成熟と社会的相互交渉の関連性という視点
 1.乳児期における自己調整発生の視点
 (1)親による子どもの行動の抑制
 (2)自己調整発生モデルにおける時期別の特徴
 (3)Kopp(1982)による自己調整発生モデルの問題点
 2.乳幼児期の自己調整に関する近年の研究動向
 (1)乳児の自他理解能力と自己調整の関連性を扱った研究
 (2)親の働きかけを扱った研究
 (3)子どもの自己調整的行動における個人差に関する研究
 (4)親子のぶつかり合いと子どもの自己調整における個人差
 (5)従来の自己調整研究への批判
第4章 自己調整に関する他者との関係という視点
 1.乳児期の自己感という考え方
 (1)前言語的な自己感は存在するか
 (2)対人的経験における力動的情動-新生自己感の形成期(誕生から2,3ヶ月時)
 (3)自己感の発達推移
 (4)乳児の情動状態を調整する他者-中核的自己感の形成期(生後2,3ヶ月から7~9ヶ月時)
 (5)乳児と主観的経験を共有する他者-主観的自己感の形成期(生後7~9ヶ月時から15ヶ月時)
 (6)言語による共有経験-言語自己感の形成期(生後15ヶ月時以降)
 (7)本節のまとめ
 2.関係発達論という考え方
 (1)関係としての発達
 (2)繋合希求性と自己充足欲求という二つの欲望における両義性
 (3)親と子どもの関係に固有な両義性
 (4)能動と受動の交叉
 (5)映し合うこと
 (6)生後1年目の親の関わり
 (7)生後2年目の親の関わり-親子が抱える揺らぎ
 (8)両義性を孕んだ存在としての主体という概念
 (9)関与観察とエピソード記述
 (10)本節のまとめ
第5章 本論文に固有の自己調整発達の考え方
 1.親子間の思いの“厚み”の違い
 (1)親の「しないで欲しい」に込められた思いの多元性
 (2)子どもの「こうしたい」思いに見る二元性
 2.親子関係の歴史性の観点から見る自己調整研究の位置づけ
 3.親子の関わり合いを読み解く準拠枠と自己調整の発達時期
 (1)親子の関わり合いを読み解くための準拠枠
 (2)自己調整の発達時期
 4.本論における観察者の立ち位置-関与観察とエピソード記述
 (1)再び関与観察について
 (2)関与観察を実践していたことへの筆者の気づき
第2部 乳幼児期における自己調整発達の様相
第6章 研究協力者について
 1.縦断観察の概要
 (1)これまでの資料収集の概要
 (2)本論で取り上げる縦断観察の概要
 2.家庭訪問の概要
 3.観察当日の様子と,当日のビデオカメラによる収録方法,および資料の整理
 (1)観察当日の様子と,ビデオカメラによる収録方法
 (2)資料の整理
第7章 3組の親子の関わり合いに対する筆者の印象の違い
第8章 “柔軟な揺らぎ”のお母さんとTくんの自己調整の発達過程
 1.Tくんの自発的遊びとお母さんの応答
 【エピソード1】コンコン,したくなっちゃった(Tくん:10ヶ月)
 2.Tくんの「こうしたい」思いとお母さんの応答
 【エピソード2】ぬいぐるみと遊びたい(Tくん12ヶ月)
 3.お母さんがTくんの楽しい気持ちを受け止めて遊んであげること
 【エピソード3】ビデオカメラに突進するぞ(Tくん16ヶ月)
 4.お母さんがTくんの要求を押し戻すこと
 【エピソード4】ママ,ボクの言う通りにして(Tくん16ヶ月)
 5.Tくんがお母さんの「こうしないで」を聞き入れて譲ること
 【エピソード5】消防自動車のサイレン,消してあげる(Tくん18ヶ月)
 6.Tくんの「こうしたい」とお母さんの「こうしないで」における相互調整
 【エピソード6】ママが困ることはしないよ(Tくん20ヶ月)
第9章 “Yちゃんに傾倒する揺らぎ”のお母さんとYちゃんの自己調整の発達過程
 1.Yちゃんの嬉しい気持ちとお母さんの応答
 【エピソード1】いないいないばぁ,楽しくなっちゃった(Yちゃん:10ヶ月)
 2.Yちゃんの「こうしたい」思いとお母さんの応答
 【エピソード2】コインかじってるとこ,見て(Yちゃん15ヶ月)
 3.お母さんがYちゃんの甘えたい気持ちを受け止めたこと
 【エピソード3】ママ,ぶつけっこして(Yちゃん20ヶ月時)
 4.Yちゃんがお母さんの思いに応じたこと
 【エピソード4】お人形さん,抱っこする(Yちゃん21ヶ月時)
 5.Yちゃんが気持ちを立て直して,お母さんの思いを聞き入れること
 【エピソード5】お片づけ,する(Yちゃん23ヶ月)
第10章 “Rくんへの期待に傾倒する揺らぎ”のお母さんとRくんの自己調整の発達過程
 1.お母さんの誘い込みとRくんの応答
 【エピソード1】ラッパ,かじる(Rくん:11ヶ月)
 2.Rくんの「こうしたい」思いとお母さんの方向付け
 【エピソード2】ロールカーテンで遊びたいのに(Rくん14ヶ月)
 3.お母さんの思いがRくんに届かないこと
 【エピソード3】お人形さん,動かしてよ(Rくん18ヶ月)
 4.お母さんがRくんの楽しい気持ちを受け止めること
 【エピソード4】積み木,飛んでっちゃったよ(Rくん20ヶ月)
 5.Rくんがお母さんの「そうしないで欲しい」を聞き入れること
 【エピソード5】ビデオテープ見たいけど,見なくてもいいよ(Rくん21ヶ月)
第11章 “親子関係の歴史性”という観点から見る自己調整発達のメカニズム
 1.親子間の〈調整する-される〉関係のありようとその成り行き
 (1)Tくんの場合
 (2)Yちゃんの場合
 (3)Rくんの場合
 2.自己調整発達のメカニズム
 3.取り上げることができなかった課題
第3部 全体考察
第12章 本論文の全体考察と今後の課題
 文献
 謝辞


 
著者塚田みちる 著
発行年月日2009年01月31日
頁数250頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1711-6