王朝仮名文学論攷
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Ⅰ 序説
第一章 仮名の発達と芸術意識
一 仮名とは 二 女性の教養と仮名 三 芸術観と美意識
四 源氏物語の書道観 五 和様書道の完成と新展開
第二章 仮名文学の開花
一 仮名文学と漢詩文 二 仮名の成立 三 六歌仙の新風
四 竹取物語の言葉 五 伊勢物語の言と事
第三章 源氏物語の謎―文字と文学―
一 三つの謎 二 女手の仮名 三 草仮名の時代
四 女手への移行期 五 紫式部時代の仮名
Ⅱ 物語文学論
第一章 源氏物語への道程
一 源氏物語の魅力
1桐壷の愛 2紫の上の悲しみ
3危機的情況における人間のあり方―物語における虚構の意味
二 虚構による物語の成立
1物語のいできはじめの祖 2かぐや姫の形象 3人間存在の矛盾と悲哀
三 虚構不信と物語の現実化
1物語の盛行と虚構への反撥 2うつほ物語における虚構の現実化
3文人作家と歴史意識
四 新しい人間観と歴史意識の深化
1社会的存在としての人間 2貴宮の人間造型 3うつほ作者の限界
五 虚構による真実の獲得
1蜻蛉日記における内的体験の表現 2源氏物語の虚構 3物語と歴史の内面化
第二章 竹取物語論―その思想史的位置づけ―
一 竹取物語の制作意図
二 三つの問題点
1仮名散文成立の可能性 2知識人―作者としての条件 3精神的基盤― 仏教的契機
三 宗教的認識と人間の恩愛
四 末法到来と浄土教
五 まとめ
第三章 竹取物語の本文
一 現存本文の信頼性
二 二系統のテキスト
三 両系統の優劣
四 異本系統本文への疑念
第四章 伊勢物語的なるもの
はじめに
一 伊勢物語と古今集
二 二条后章段と本事詩
三 伊勢斎宮章段と全真記
四 狩使本と初冠本
第五章 伊勢物語と<みやび>
一 <みやび>の本意
二 平安朝文学の<みやび>
三 伊勢物語の<みやび>
四 いちはやきみやび
五 業平の影
六 伊勢物語的<みやび>の成立
* 勢語愛玩の弁
第六章 うつほ物語―脈動する文学精神の軌跡として―
はしがき
一 物語の始発
二 混乱する記事―三の官の場合
三 成立過程論の立脚点
四 物語増益の方向
第七章 うつほ物語の時間構造
はじめに
一 竹取物語における時間
二 うつほ物語の初期
三 勅命と予言―時間への規制
四 「内侍督」 の試み
五 「内侍督」の位置づけ
六 第二部の世界
七 「楼の上」冒頭部の問題
八 「楼の上」 における時間
九 琴の道の栄光
第八章 霊異と栄誉―「楼の上」の主題―
一 異質な世界
二 秘琴伝授の環境設定
三 秘蹟の時空
四 聖俗のあわい
第九章 初期物語と絵画―うつほ物語の<絵解>を中心に―
一 源氏物語に見る物語と絵画
二 絵画化による物語の成長
三 女性読者と絵画
四 うつほ物語の<絵解>
五 <絵解>の資料価値
六 <絵解>の役割
七 <絵解>=絵巻の裏書
八 語り手介入の証跡
第十章 源氏物語成立前後
一 物語作者と読者層―交流と反撥の構図
はしがき 1 無名草子の所説 2 物語の習作 3読者への意識 4男性読者の存在 5続編への展望
二 物語の続編―〈匂宮三帖〉の問題 1 源氏物語正編の一回的完結性 2 <匂宮三帖>の異質性 3 <匂宮三帖>代作説の可能性 4 うつほ物語の成長と改作 5うつほ物語における作者と読者 6 <匂宮三帖>の作者たち 7「匂宮」と「紅梅」の着想 8 「竹河」の挑撥 9 「竹河」紫式部原作説の吟味 おわりに
三 紫式部日記の証言を追って 1 御冊子作り 2 三種の稿本 3 第一部の完結 4 紫上糸と玉鬘系 5豪華な調度手本 6 新しい源氏物語 7 物語界の情況 8うつほ物語の先例
第十一章 後冷泉朝文学の位相
一 末法到来
二 後冷泉朝の文化的背景
三 浜松中納言物語と夜の寝覚
四 狭衣の世界
五 時間性拒否の文学
第十二章 浜松中納言論―女性遍歴と憧憬の間―
はじめに
一 夢の女―非現実のあわい
二 中納言の帰朝―尼姫君と大弐の女
三 大弐の女との再会
四 尼姿の愛妻
五 物語の基底―仏の方便
六 宿世の了解
七 形代の愛の否定と転生の祈り
八 肉の痛みと憧憬
九 宿世の転換
十 吉野の姫君の変貌
十一 愛執の女身―救済の拒否
十二 現世の飢渇 むすび
* ことばのあわい
Ⅲ 女涜日記文学論
第一章 女流仮名文学の創始―蜻蛉日記と道綱母の場合―
はじめに
一 蜻蛉日記序文の解釈
二 跋文からの反照
三 <作者>の登場
第二章 蜻蛉日記の始発
一 日記と身物語
二 序文に見る道綱母の物語観
三 長歌をめぐる問題
四 空白期問と<身物語>の制作
五 <身物語>の始まり
六 父の旅立ち
七 幸福の吹聴
八 上巻の成立
第三章 蜻蛉日記の日記意識
はじめに
一 兼家による誘導
二 日記の体例
三 日記の認識
四 上巻成立の効用
第四章 名歌「嘆きつつ」の歌の位相―古典解釈のアポリア―
はじめに
一 「なほもあらじ」―諸注の錯綜
二 「さなンめり」に注目
三 「例よりはひきつくろひて」の対他意識
四 文箱の文
五 外部資料から
六 公任的理解に立つ名声
七 結語
第五章 蜻蛉日記の難解さ―表現構造との関連性―
一 はじめに 1 日記的文体の特質 2 難解さの克服への途
二 いわゆる「兼家の狂態」の真実 1 第一の事例の提示 2 新視角<政治的観点>の導入 3 相撲の節―疎隔の様相
三 登子の夢見 1 第二の事例の解釈 2 中巻の基調への親和
四 まとめ
第六章 道綱母の年齢
一 はじめに 1 蜻蛉日記の難解さ 2 日記的表現の根拠 3 成立論の盛行とその成果
二 仮説の提示 1 安和二年の大病 2 安和二年は三十七歳厄年か 3 厄年説の傍証 4 天禄三年厄年説の批判
三 道綱母の年齢推定と問題点 l 道綱母の結婚年齢 2 天禄三年入老境説 3 天禄三年入老境説の補強
四 むすび
第七章 心の鬼と身内の蛇―蜻蛉日記独詠歌の世界―
一 夢の畏怖
二 石山の霊夢
三 唐崎の六月祓
四 性の飢渇
五 石山の啓示
六 男世界への無理解と阻隔
七 独詠歌―空転する情念
八 鳴瀧籠り―誤解の重なり
九 歌の復活―危機の超脱
第八章 和泉式部の文と歌
はじめに
一 紫式部の和泉式部批評
二 歌文融合表現の意義
三 直接経験の直叙―現実と幻想との境界閾
四 日記と和泉式部集の異同
五 和歌から散文へ
はかなしごと
をはりのかみちかみつ考
1 問題の所在 2 藤原知光の身辺 3 誤写の蓋然性 4 結語
あとがき
索引