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平安貴族の婚姻慣習と源氏物語

定価: 14,300 (本体 13,000 円+税)

従来、歴史学、民俗学などの諸分野において論じられてきた平安貴族の婚姻を平安文学研究者の視点から検討する。古代中国と古代日本の律令条文、婚姻儀式の比較を土台として、婚姻居住と多妻婚における正妻の成立、『源氏物語』のヒロイン紫の上の呼称、妻の座等について論究し、当時の婚姻慣習をあざやかに解明した新著

【著者略歴】
胡 潔(Hu Jie)
1956年 中国上海市に生まれる
1983年 上海外国語学院日本語・アラビア語学部卒業
1983年9月 上海大学国際商業学院日本語学部専任教員
1995年 お茶の水女子大学修士課程修了
1999年 お茶の水女子大学博士課程修了。博士(人文科学)
お茶の水女子大学大学院助手、研究員を経て、
現在、名古屋大学大学院国際言語文化研究科助教授
目次を表示します。
凡例
序 論
第一部 外来文化の摂取と古代日本の婚姻慣習
 第一章 妻妾制度の導入とその変容―律令の妻妾規定を中心に
  一 問題の所在
  二 中国の妻妾制度と律令条文
   1 中国古代思想における妻と妾  2 唐律の妻妾条文
  三 日本の律令条文における妻妾に関する規定
   1 婚姻成立と解消  2 宗の不在と妻妾の地位  
   3 妻妾の経済に対する権利
  四 結論
 第二章 婚姻表現の導入とその変容―妻妾に関する表現を中心に
  一 問題の所在
  二 古代中国と古代日本の「妻」と「妾」
   l 中国の妻妾制度と呼称上における反映  2 「嫡妻」について
   3 「前妻」「後妻」について  4 「次妻」について 
   5 「妾」について     
  三 結 論
 第三章 嫁取姫と婿取姫の婚儀―『河海抄』の「聘則為妻、奔則為妾」
     論批判
  一 問題の所在
  二 中国社会の婚姻制度における「聘」の意味と使用
  三 古代日本の書物に見る「聘」の用法
   l 律令条文の「聘」に関する内容の削除  2 『日本書紀』に見る
   「聘」の用法  3 『万葉集』に見る「聘(娉)」の用法  
   4 「聘財」「聘礼」の用法
  四 嫁取婿の婚儀と婿取婿の婚儀
   1 婿取婚における「聘」の欠如  2 婿取婿の婚儀の機能について
  五 結論
第二部 平安貴族の一夫多妻婚と婚姻居住
 第一章 平安貴族の婚姻居住と平安文学
  一 問題の所在
  二 妻方居住婚説について―高群説を中心に
  三 夫方居住婚説について―江守説を中心に
  四 物語に見られる夫側提供の独立居住婚
  五 訪婚、妻方居住婚、独立居住婚の併存
  六 結 論
 第二章 多妻婚における正妻の成立―『蜻蛉日記』と『源氏物語』を
     中心に                        
  一 問題の所在
  二 正妻事前決定説について―初妻説を中心に
  三 正妻の事後的選定―『蜻蛉日記』を通じて
  四 正妻の事後的選定―『源氏物語』を通じて
   l 左馬頭の発言と経験談の意味  2 源氏の妻達―葵と六条御息所
  五 結論
 第三章 多妻婚における正妻の実態―「北の方」を手がかりに
  一 問題の所在
  二 「北の方」と「妻」―その敬語的性格
  三 「北の方」の成立時期
  四 「北の方」と「北堂」―その語源の由来と意味
  五 「北の方」と居住関係
  六 「北の方」と正妻の優位
  七 「北の方」と「むかひ腹」
  八 「北の方」と一夫多妻婚
  九 結論
 第四章 光源氏の居住と多妻婚―六条院を中心に
  一 問題の所在
  二 光源氏の居住と多妻婚
   l 光源氏の居住概況  2 二条院―思ふやうならむ人を据ゑて住ま
   ばや 3 二条東院―心苦しき人々を住ませむ  4 六条院―おぼつ
   かなき山里人などをも集へて住ません
  三 六条院と多妻婚原理
   l 六条院の所有と伝領  2 夫婦間の経済関係  3 多妻間の関係
  四 結論
第三部 紫の上の妻の座に関する研究
   問題の所在
 A 紫の上の呼称に関する研究
 第一章 寝殿について
  一 問題の所在
  二 寝殿の機能について
  三 物語における寝殿
  四 結論
 第二章 「上」について
  一 問題の所在
  二 婚姻居住規制と「上」の原義
  三 「貴人の妻」としての「上」
  四 同居の視点から見る「殿」と「上」
  五 「北の方」と「上」
  六 紫の上をめぐる「北の方」と「上」
  七 結論
 第三章 紫の上の呼称「上」と「対の上」
  一 問題の所在
  二 「上」と「対の上」の分布状況と使用概況
  三 紫の上の「上」の用法
    l 同一空間と「上」  2 「上」と紫の上の妻の座
  四 紫の上の「対の上」の用法
    1 空間距離と「対の上」の用法 2 「対の上」と紫の上の妻の座
  五 結論
 B 紫の上の生涯と妻の座
 第一章 紫の上の登場とその結婚
  一 問題の所在
  二 若紫の登場と二条院入り
    1 北山の童女―恋の物語の始発  2 藤壺の「ゆかり」―理想の
    女性の予感 3 後見の必要な童女登場の意味―源氏に養育される
    条件 4 結婚の擬態―若紫を二条院に引き取るために
  三 源氏と紫の上の結婚
    1 結婚・裳着の意味―社会公認を得る 2 源氏の養育と紫の上の
    妻の座
  四 結論
 第二章 源氏の須磨退居と紫の上の妻の座
  一 問題の所在
  二 「優れたる心ざし」
  三 「つひの頼みどころ」
  四 結論
 第三章 紫の上が明石姫君の養母になる意味
  一 問題の所在
  二 入内する女子とその母親
  三 明石姫君の養女問題をめぐって
  四 紫の上にとっての養女引き取り
  五 結論
 第四章 若菜以降の紫の上の妻の座
  一 問題の所在
  二 「朝顔」巻の紫の上と「若菜」巻の紫の上
  三 若菜以降の正妻並立
  四 紫の上の寂寥と道心
  五 結論
結論にかえて
参考文献
あとがき
索引(人名・書名・事項)
著者胡潔 著
発行年月日2001年08月15日
頁数472頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1272-2

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