語りによる保育者の省察論
保育との関連をふまえて
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まえがき
序章 保育者の省察論の展開―先行研究の概観と検討―
第1節 保育者の省察が重視される背景
1.初等教育と保育の差異が曖昧であった時代の保育
2.活動の生まれ方への着目
3.求められる省察の質
4.省察研究の現在
第2節 保育行為の判断の根拠を問う視点からの省察
1.保育行為の判断の根拠を問う省察とは
2.省察内容としての判断の根拠を問うことの限界
(1)判断の根拠を問うことでは想起されない現象
【事例A】M男のジャンプ
(2)目的的でない省察の始まり方
第3節 保育記録論から読み取る省察論
1.明日の保育の構想につなげる保育記録と省察
2.長期的にみた保育者の成長に資する保育記録と省察
3.省察する保育者のパースペクティヴと省察内容
第4節 動機理論からみる省察
1.保育者が省察する目的動機
2.理由動機への着目
3.子ども理解における理由動機の必然性
4.動機の理解から現象の理解へ
第5節 省察における過去把持と想起
1.省察における過去把持と想起
2.〈保育〉の途上性と循環過程
第6節 本章のまとめ
1.記録論からみる省察
2.動機理論からみる省察
3.想起と過去把持の問題が指し示すこと
第1章 本研究の目的と方法
第1節 本研究の目的
1.本研究の主題
2.本研究の前提
(1)子どもの主体性を尊重する保育
(2)保育者の省察
(3)語り
(4)言語表記の問題
3.本研究の目的
第2節 観察と聴きとりによる質的研究方法の検討
1.参与観察という方法
(1)保育者の主体性の尊重による内在的理解の実現として
(2)保育者と研究者の協働として
2.語りの聴きとりという方法
(1)語りの方法論的利点
(2)語り手と聴き手の関係性を前提とすること
(3)ナラティヴとして聴くこと
3.対象の選定
4.現象学的研究における分析の妥当性の担保
第3節 本研究の方法
1.保育観察
(1)観察を行った期間
(2)対象の選定
(3)観察のスタイル
(4)保育記録の作成
2.保育者の語りの聴きとり
(1)語りについての取り決め
(2)逐語録作成
3.事例の作成と考察
(1)事例の作成
(2)事例の考察
第2章 省察の表現としての語り―事例分析の経過①―
第1節 語りに表れることば
【事例2-1】心を動かしてほしい
【事例2-1の考察】
1.保育記録の資料性とジャーゴン
2.ジャーゴンを用いない表現
3.語りに表れる保育場面の背景
第2節 保育者と聴き手の関係性
【事例2-2】「せんせい」「せんせい」
【事例2-2の考察】
1.聴き手との関係の変容
2.ことばと沈黙
第3節 省察のはじまり方
【事例2-3】夏期保育の一日を終えて
【事例2-3の考察】逡巡から想起へ
第4節 語りだから聴けることば
【事例2-4a】手が語る①―大きなカエル―
【事例2-4b】手が語る②―痣だらけの腕―
【事例2-4abの考察】受け入れ難きを受け入れようとする
第5節 事例考察のまとめ―語りという省察様式―
第3章 保育者の語りから人間関係の創出性を読み解く試み―事例分析の経過②―
第1節 3才児と保育者の人間関係創出過程
【事例3-1】「なんか嬉しい感じ」「なんか楽しい感じ」を味わう
【事例3-1の考察】関係の相乗効果
【事例3-2a】先生が保育室から出ること
【事例3-2b】子どもに行き先を知らせる
【事例3-2abの考察】見えない糸が意識される時
【事例3-3】靴下を履かせる
【事例3-3の考察】見えない糸をたぐり寄せる
【事例3-4】スーパーマンのジャンプ
【事例3-4の考察】保育行為の根拠と判断
【事例3-5】豆に手を伸ばす
【事例3-5の考察】子どもが見えない糸を調整する
【事例3-6】山への道を引き返す
【事例3-6の考察】子どもの行為に映る保育者の姿
第2節 事例研究のまとめ―構築されていく関係性を支える省察―
1.子どもの育ちと保育行為
2.〈保育〉における保育者の在りよう
3.保育と省察の関連
第4章 保育者の語りから子どもの主体性の尊重を読み解く試み―事例分析の過程③―
第1節 選択の主体であること
【事例4-1】映画館をやりたい
【事例4-1の考察】憧れが目的動機に
【事例4-2】ゲーム機づくりかピストルか
【事例4-2の考察】保育者の関与と役割
【事例4-3】薄紙の花づくり
【事例4-3の考察】子どもの経験と保育者の役割の変容
第2節 事例考察のまとめ―保育のさなかにおける選択とその主体―
第3節 子どもの主体性を尊重する保育
1.子どもの目的動機を基点とする保育
2.保育と省察の関連
第5章 省察におけるパースペクティヴの移動―事例分析の経過④―
第1節 省察対象とパースペクティヴの移動
1.省察対象
2.省察対象の変容
3.A保育者の省察内容と変容
【事例5-1a】一緒にあそびたいのに
【事例5-1aの考察】パースペクティヴの違い
【事例5-1b】群がる子どもと遠くで待つ子ども
【事例5-1bの考察】省察内容の客観化
【事例5-1c】先生はどうすればいいの
【事例5-1cの考察】過去把持の統合
4.A保育者の事例考察のまとめ
第2節 過去把持の様相
【事例5-2a】ブロックを奪われる
【事例5-2b】金メダルがほしい
【事例5-2abの考察】過去把持から次の保育へ
第3節 理由動機の発見
【事例5-3】保育者としての私の特徴
【事例5-3の考察】発見する私
第4節 理由動機の保持
【事例5-4a】私の目指す保育
【事例5-4b】群れてきた子どもたち
【事例5-4abの考察】意識にとどまっている私
第5節 事例考察のまとめ―パースペクティヴの移動がもたらすこと―
第6章 保育者の企図と目的動機―事例分析の経過⑤―
第1節 目的動機と企図
1.反省から導き出す企図
【事例6-1】イメージどおりにしてあげられない
【事例6-1の考察】企図した行為の実現可能性
2.省察における目的動機
【事例6-2a】色水あそびがしたいけど
【事例6-2aの考察】行為化の好機を待つ
【事例6-2b】職員室への出入り
【事例6-2bの考察】実現しなかった目的動機
【事例6-2c】フルーツバスケットができた
【事例6-2cの考察】実現したい自己像および関係としての目的動機
第2節 事例考察のまとめ―目的動機と企図―
終章 直接体験と間接体験の往還としての保育と省察―総括と考察―
第1節 事例分析の総括
第2節 子どもの主体性を尊重する保育における保育者の経験
1.保育者の直接体験としての保育
2.保育者の間接体験としての省察
3.結論―〈保育〉の対話性を生きる保育者―
さらなる研究課題
1.語りの身体性について
2.本当に子どもが選択しているのではないという見方について
注
引用文献
あとがき
謝辞