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赤の力学

色をめぐる人間と自然と社会の構造

定価: 3,850 (本体 3,500 円+税)

日本の社会および文化的に浸透する「赤」について、その範疇を構成する色材から色の概念を再考。人間と色の関係性から、わが国の社会文化史的思想の構造を明らかにする。

【著者紹介】
藤井尚子(ふじい なおこ)
1995年 多摩美術大学大学院美術研究科修士課程(デザイン)修了
2005年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程造形学専攻美術教育研究領域修了
現 在 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 准教授
      東京藝術大学美術学部デザイン学科 非常勤講師
      博士(美術)
※データは刊行当時のものです※
目次を表示します。

第一章 赤の基層―アニミズムとヘゲモニー―
 第一節 色材について
  1.1 色材―色の知覚における必然―
  1.2 顔料の特性
  1.3 染料の特性
 第二節 丹(に)にみる社会文化史の基層
  2.1 最古層の赤
       考古学的知見から―『魏志』における朱と丹―
  2.2 「丹」の呼称
       「タン」≠「ニ」
       「赤土」成分内のベンガラと天然水銀朱
  2.3 「丹(に)」の物性―神話にみる土の意味―
       土にみる「人間の創造」と「天地創造における神」
       日本神話の土―波邇夜須毘売神にみる両義性―
  2.4 丹(に)の象徴―土の両義性から―
 第三節 朱とベンガラの発現にみるヘゲモニー
  3.1 丹の分化―選鉱技術の進化と目的―
       丹に内包される二つの赤―朱とベンガラ―
       選鉱分離の背景―考古学的知見による丹の用途から―
  3.2 朱とベンガラの色差―色名と字形による表意から―
       朱
       ベンガラ
       朱とベンガラ―色差による象徴性―
  3.3 歴史的文献にみる用途
       儀礼における一回性―歴史的文献にみる丹の用途から―
  3.4 色差による二重構造の整序
       朱の象徴性―神功皇后の三韓征討神話より―
       ベンガラの象徴性―「海幸山幸」神話にみる主従関係―
 第四節 まとめ
第二章 赤の範疇
      ―人間的自然としての「美」と「生命力」を中心に―
 第一節 クレナイ―渡来技術とあらたな「美」―
  1.1 染色技術の発見と進展―「美」を基盤として―
  1.2 ベニバナの名称にみる用途
  1.3 外からもたらされたベニバナの赤
       黄色染料から赤色染料へ
       匈奴の「臙脂」にみるベニバナ―歴史的背景から―
       赤色素抽出法―中央アジアの地質的特性から―
       中国における色素抽出法―『斉民要術』から―
       日本におけるベニバナ―歴史的文献より―
  1.4 朱を継承するクレナイ―『播磨国風土記』にみる赤―
       神功皇后の朱と応神天皇の紅草―母子関係にある赤色材―
       渡来文化の象徴―応神天皇の国家統制―
       次世代赤色材―「塗」から「染」へ―
  1.5 染色法にみる赤への憧憬
       黄色素の除去
       赤色素の抽出
       丹の選鉱とベニバナ染色法の類似性
       「韓紅花」―高純度の赤のイデオロギー―
       イデオロギー装置における二つの美意識
 第二節 ベニ―「生命力」に由来する赤―
  2.1 生命力に由来する赤
       模倣・再現と忌避―薬の発見と染料―
       民間信仰にみる赤の意義
  2.2 ベニの来歴―化粧料としての「赤」―
       社会的行為としての化粧
       赤色化粧料の原料―ヘンナとベニバナ―
       化粧の起源―人間の本能的生命力にみる―
  2.3 丹の系譜―アニミズム的潮流―
       「延丹」にみる丹とベニの連関
       レーキの位置取り―「塗」と「染」の間―
  2.4 外的身体と内的身体―染料と生薬の類似性―
       医療行為としての化粧
       化粧料と同義の薬―色における同類概念―
       染料と薬の対応関係
       外的身体(マクロコスモス)と内的身体(ミクロコスモス)における色/薬効
       同色生薬―呪術的起源と経験的起源―
 第三節 まとめ
第三章 赤の力学―中心と周縁のヘゲモニー―
 第一節 ベニバナ交易のシステム
  1.1 生産地と消費地―中心と周縁の変容―
       平安時代のベニバナの流通―「禁色」と「調」―
       近代以降におけるベニバナの流通
  1.2 最上紅花の起源―生産と流通によるヘゲモニー―
       今田信一『最上紅花史の研究』を中心に
       商業経済における「価値」の流通
  1.3 紅花商人の出現
       農村の変化―換金作物ベニバナの生産上昇の背景―
       紅花商人の役割―生産と消費の仲介者―
  1.4 生産地と消費地における雛人形の差異について
       人形の起源―「とりもの」と「はらいもの」―
       雛人形の発展―「ひひなあそび」から「雛まつり」へ―
       雛人形にみる赤
 第二節 生産地における赤の象徴性―山形県西村山郡河北町谷地の「雛まつり」を中心に―
  2.1 河北町谷地の基底文化―農耕暦と年中行事―
       河北町の歴史と風土的特性
       河北町谷地の年中行事―風土と農耕暦―
  2.2 河北町谷地の雛まつりにおける雛人形の意義
       河北町谷地の雛文化
  2.3 河北町谷地の雛まつり―「オヒナミ」と「ゴンゴサン」―
       年中行事における雛まつりの意義
       「谷地の雛まつりおよび雛人形にみる『赤』の意義」の聞き取り調査
       「オヒナミ」についての聞き取り―谷地における匿名教育の場―
       旧家における雛まつりの意義
       雛まつりの記憶―戦中・戦後から昭和26年以降―
  2.4 「雛膳」にみる「春告げまつり」と「ハナ」
      ―谷地雛まつりにみる春と女性の同一視―
       「雛膳」についての聞き取り―食材と構成―
       ハレにおける女性原理
       ハナの象徴性―色とハルと女性性―
 第三節 まとめ


引用・参考文献
謝辞
著者藤井尚子 著
発行年月日2015年12月25日
頁数214頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2113-7