博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

マクマリーのタイプ・スタディ論の形成と普及

カリキュラムとその実践思想を読み解く基盤

定価: 13,200 (本体 12,000 円+税)

米国ヘルバルト主義運動の担い手の一人、マクマリーに着目。マクマリーのタイプ・スタディ概念の使用文脈の変遷を明確にすることを通じて、カリキュラム論や教授理論そのものの質的転換を捉える大著。

【著者紹介】
藤本和久(ふじもと・かずひさ)

略歴
 1973年 兵庫県生まれ
 1996年 京都大学教育学部卒業
 2001年 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学
 2001年 慶應義塾大学教職課程センター助手(嘱託)
 2004年 慶應義塾大学教職課程センター専任講師
 2008年 慶應義塾大学教職課程センター准教授
 2013年~2015年 コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ訪問研究員
 2016年 博士(教育学)取得(京都大学)
 2018年 慶應義塾大学教職課程センター教授、現在に至る。
大阪大学、お茶の水女子大学、法政大学、一橋大学などで非常勤講師を務める。
専門は教育方法学、カリキュラム論、米国カリキュラム開発史。博士(教育学)。

主な著書など
 『学力を育てる教育学 第2版』(共著、八千代出版、2013年)、『現代教育の論点・争点』(共著、一藝社、2014年)、『教育の方法・技術』(共著、学文社、2014年)、『教育方法論』(共著、一藝社、2014年)、『グローバル化時代の教育評価改革―日本・アジア・欧米を結ぶー』(共著、日本標準、2016年)、『「授業研究」を創る』(編著、教育出版、2017年)など
目次を表示します。

はしがき

序章 問題の所在と本研究の課題
 1 問題の所在と対象限定
  1-1 カリキュラムをめぐる「流行」現象
  1-2 米国ヘルバルト主義運動の位置づけをめぐる問題と本研究の
      関心
  1-3 マクマリーという人物
 2 先行研究の検討
  2-1 米国ヘルバルト主義を対象にした総括的研究
  2-2 カリキュラム開発史研究と教員養成史研究
   2-2-1 カリキュラム開発史研究におけるマクマリー
   2-2-2 教員養成史研究におけるマクマリー
  2-3 マクマリーのタイプ・スタディおよびプロジェクトを検討した
      研究
 3 本研究の課題と方法
  3-1 本研究の課題
  3-2 研究方法および対象資・史料
  3-3 本論文の構成

第1章 19世紀後半の「授業」の実態と米国ヘルバルト主義
 1 19世紀後半の「レシテーション」の定着過程
  1-1 19世紀後半におけるレシテーションの性格と普及
  1-2 モニトリアル・システム
  1-3 ページの教授方法の普及と影響
  1-4 オスウィーゴ運動における授業
  1-5 レシテーションの拡大解釈と新しい教授方法の模索
 2 米国ヘルバルト主義とレシテーション
  2-1 1890年頃における「レシテーション」の捉え方
  2-2 「中心統合法」の主張と「レシテーション」
  2-3 「中心統合法」から「相互関連法」への「転換」
  2-4 「相互関連法」における「レシテーション」の限界と
      「プロジェクト」の提案
 3 小括

第2章 タイプ・スタディ論の生成・発展過程
 1 米国ヘルバルト主義運動期のタイプ・スタディ概念の創出
  1-1 タイプ・スタディの登場
  1-2 米国ヘルバルト主義運動隆盛期のタイプ・スタディ
 2 単元開発論への転換
  2-1 米国ヘルバルト主義運動の終焉とマクマリーの再出発
  2-2 カリキュラムの単純化が深化を導くという逆説
 3 ドイツ再訪問を契機としたタイプ・スタディ論の転換
  3-1 米国教育界からみた1910年代のドイツ
  3-2 ドイツの先進性と向き合うマクマリー
  3-3 帰国後の成果
 4 GPCTでの単元開発とその特徴
  4-1 GPCTにおけるタイプ・スタディ開発
   4-1-1 NISNSからGPCTへの異動
   4-1-2 単元開発の着手
  4-2 タイプ・スタディの具体的な扱いとカリキュラム論上の意義
  4-3 プロジェクト概念への合流
   4-3-1 コース・オブ・スタディの束縛からの脱却
   4-3-2 『プロジェクトによる教授』の補足メモ
   4-3-3 タイプ・スタディ論およびプロジェクト論の成熟
 5 タイプ・スタディ論とプロジェクト論の受難
  5-1 マクマリーの意図との齟齬
  5-2 教育流行現象への批判
  5-3 退潮のなかでのディフェンスと再整理
  5-4 マクマリーの到達点と総括
 6 小括

第3章 教員養成・教師教育を通じたタイプ・スタディの普及過程
 1 タイプ・スタディの持つ教員養成機能の明確化
  1-1 画期となる1914年と「発展的方法」の提唱
  1-2 教員養成・教師教育論とタイプ・スタディ論
  1-3 教師の専門性と教員養成機関が直視すべき課題
 2 大学院生はマクマリーのもとで何を学んだか
  2-1 大学院生から見たマクマリー
  2-2 修士論文作成を通じた大学院生たちの学び
  2-3 タイフースタディ集に反映された指導学生の研究
  2-4 指導学生の修了後の歩み
  2-5 ノース・カロライナ州の教師たちの事例―彼らの書簡史料を
      もとに
   2-5-1 モリス・ミッチェルの単元論研究
   2-5-2 エドウィン・キーの苦悩とタイプ・スタディの効果研究
  2-6 サウス・カロライナ州の教育行政官の事例
 3 小括

第4章 教育の科学化とタイプ・スタディ
 1 米国ヘルバルト主義運動隆盛期の科学化の指向
  1-1 米国ヘルバルト主義における子ども研究への着目
  1-2 米国ヘルバルト主義の教授理論―子ども研究への契機
  1-3 米国ヘルバルト主義における子ども研究の役割
 2 教育の科学化
  2-1 時代精神と教育研究の状況
  2-2 学校(教育)調査運動
  2-3 教育測定運動
 3 学校調査運動とマクマリー
  3-1 内務省教育局主導のサンフランシスコ調査
  3-2 ノース・カロライナ州ウィルミントンの教育調査
 4 教育測定運動とタイプ・スタデイの危機
 5 小括

第5章 附属学校への関与を通じたタイプ・スタディの開発・普及過程
 1 NISNSでの学校運営
  1-1 NISNSへの着任と教員養成プログラムの構築
  1-2 マクマリーとライダーマクマリーによる具体的な実践
 2 GPCTにおける学校運営
  2-1 PDSの開校
  2-2 PDSの位置づけと実践
  2-3 マクマリーの関与
 3 小括

第6章 ノーマル・スクール、学校、教育行政当局はマクマリーから何を学んだか
 1 運動隆盛期の地方教育誌におけるマクマリー
  1-1 米国ヘルバルト主義運動の担い手としての評価
  1-2 実践事例や教材の提供者として解されたマクマリー
 2 NISNS時代の地方の学校現場指導
 3 タイプ・スタデイの現地指導による積極的普及
 4 タイプ・スタディはいかに実践されたか
  4-1 教員養成機関でのタイプ・スタディ試案
  4-2 ゴーガンズのタイプ・スタディ開発
 5 GPCT時代の現地指導の具体例
  5-1 ノース・カロライナ州とマクマリーの接点
  5-2 ノース・カロライナ州での現地指導
 6 タイプ・スタディの後退
  6-1 タイプ・スタディの継続の断念
  6-2 マクマリー没後のタイプ・スタディの矮小化の典型例
 7 小括
  7-1 マクマリーの所論の公的な受容
  7-2 誰がマクマリーの所論に共鳴したのか
  7-3 学校現場の教師たちはマクマリーから学べたのか

終章 カリキュラムとその実践思想を読み解く基盤
 1 タイプ・スタディ概念の史的変容が示唆するもの
 2 マクマリーに直接師事した教師たちや附属学校とタイプ・スタディ
 3 学校現場におけるタイプ・スタディの受容と変質
 4 教授理論家と学校現場の関係性を捉える視座
 5 カリキュラム開発史研究に対する意義
 6 さらなる検討課題

参考文献一覧
あとがき
付録 マクマリー関連年表
索引
著者藤本和久 著
発行年月日2018年11月15日
頁数472頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2247-9