山口仲美著作集 5オノマトペの歴史 1
その種々相と史的推移・「おべんちゃら」などの語史
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著作集の刊行にあたって
まえがき
Ⅰ オノマトペの種々相
音象徴語研究の必要性
1 音象徴語の活躍 2 豊かな語彙量 3 卑俗なことば
4 意味の分かることば 5 方言の音象徴語 6 古語の音象徴語
7 外国人からみた音象徴語 8 研究の必要性
古典の擬音語・擬態語―掛詞式の用法を中心に―
1 はじめに 2 一般的用法 3 葉ずれの音 4 けものの声
5 虫の声 6 鳥の声 7 語の形態 8 むすび
擬音語から普通語へ
1 はじめに 2 直写型 3 掛詞型 4 聞きなし型
5 心情推察のことば 6 おわりに
動物の鳴き声と平安文学
1 はじめに 2 平安時代の動物の鳴き声 3 鳴き声のうつし方
4 鳴き声と平安文学
『源氏物語』の象徴詞
1 はじめに 2 象徴詞をめぐって 3 平安文学作品にみられる象徴詞
4 源氏物語の象徴詞 5 擬音語と擬態語 6 源氏物語の擬音語の性質 7 平安文学作品の擬音語との比較
8 源氏物語の擬態語の性質 9 平安文学作品の擬態語との比較 10 おわりに
『今昔物語集』の象徴詞
1 はじめに 2 従来説の訂正 3 表記と文体 4 音象徴性の度合い 5 卑俗性
6 擬音語の性質 7 擬態語の性質 8 語音結合の型の豊富さ 9 語音結合の型の性質 10 動詞型象徴詞について 11 おわりに
狂言の擬音語
1 はじめに 2 ニワトリの声―(1)雞聟 (2)地鳴きの声 (3)時をつくる声―
3 フクロウの声―(1)梟山伏 (2)狂言にみるフクロウの声の性質―
4 トビの声―(1)柿山伏 (2)狂言にみるトビの声―
5 他のジャンルの鳥声 6 おわりに
オノマトペと文学
1 はじめに 2 斬新さを付与する 3 感覚刺激を付与する 4 リズム感を与える 5 重層効果を付与する 6 機知を与える
コミック世界の擬音語・擬態語
1 はじめに 2 ストーリーを展開させる 3 滑稽感・迫力のある語を造る
4 普通の語からたやすく造る 5 心理に転用する 6 文字の工夫で臨場効果を倍増する 7 時間の流れを造り出す 8 スローモーションビデオ効果を出す 9 掛詞機能を発揮させる 10 リズム機能は、かなわない 11 おわりに
擬音語・擬態語 二〇のコラム
1 オランダ鶯は何と鳴く?―落とし語と擬音語―
2 音は社会を映し出す―擬音語が語るもの―
3 もとは擬音語!―名前のルーツ―
4 国によって異なるのは、なぜ?―世界の擬音語―
5 猿は「ココ」と鳴いていた―擬音語と文化史―
6 擬音語好きの一茶さん―俳句と擬音語―
7 発音が意味を表す―擬音語・擬態語の特色―
8 鳴き声が言葉に聞こえる―「聞きなし」と擬音語―
9 時代の価値観を表す―擬態語が語るもの―
10 一千年も生き延びる―擬音語・擬態語の寿命―
11 伝統が残っている―方言と擬音語・擬態語―
12 掛詞の技法―和歌と擬音語―
13 擬態語で人物造型―物語と擬態語―
14 口で唱える効果音―狂言と擬音語・擬態語―
15 オノマトペの創造―詩と擬音語・擬態語―
16 チントンシャン―楽器の音色―
17 幸田文さんの文章―小説と擬音語・擬態語―
18 天狗が鳴いた―意表をつく擬音語―
19 視覚効果を生かしきる―コミックと擬音語・擬態語―
20 擬音語・擬態語の型―語型とその変遷―
Ⅱ オノマトペの史的推移
動物の声を写す擬音語の史的推移
1 はじめに 2 「写実的な擬音語」と「聞きなし的な擬音語」 3 具体的な用例は 4 聞きなし的な擬音語-奈良時代― 5 聞きなしは和歌で愛用―平安時代― 6 聞きなしに不安感が漂う
7 写実的な擬音語の隆盛―鎌倉・室町時代― 8 再び聞きなしの隆盛―江戸時代― 9 笑いを誘いだす聞きなし 10 再び写実的な擬音語の繁栄―近代― 11 独創性をもとめて 12 まとめ
楽器の音を写す擬音語(1)―古代・中世―
1 はじめに 2 現代の楽器の音を写す擬音語 3 江戸時代以前の楽器の音の出現率 4 奈良時代の楽器の音 5 平安時代には楽器の音が出現しない 6 楽器の演奏は、比喩と形容句で
7 鎌倉時代にも楽器の音が出現しない 8 室町時代の狂言歌謡に囃子楽器の音―(1)楽譜は、擬音語由来の言葉
(2)小鼓・太鼓・笛の音は楽譜でもあり擬音語でもある (3)鉦の音と大鼓(おおかわ)の音は、擬音語―
9 「くゎんこくゎんこくゎんこや」とは 10 「ちやうんうちやうんう」とは 11 狂言に集中的に出現する
12 「はっぽい」とは 13 「とらろ」を、尺八の音とみせかけたか 14 室町時代の楽器の音
楽器の音を写す擬音語(2)―近世・近現代―
1 はじめに 2 江戸時代は、楽器の音があふれている 3 『松の葉』に頻出する太鼓の音
4 歌舞伎では、大太鼓の音が演出用語 5 滑稽本・草双紙・川柳にも太鼓の音 6 三味線音が鳴り響く
7 口三味線も、さかん 8 太鼓と笛の組み合わせ 9 さまざまな楽器の音 10 楽器の音が掛詞になる
11 楽器の音が、話のオチになる 12 楽器の大衆化 13 楽器の音を写せる「唱歌」
14 楽器の音に囲まれた生活 15 近現代の楽器の音 16 おわりに
男女の泣き方の推移―オノマトペからとらえる―
1 はじめに 2 近代では、女は人前で声をあげて泣いても良い 3 男は、声をあげて泣いてはならぬ
4 江戸時代では、男も声をあげて泣く 5 女も声をあげて泣く 6 男と女が、声をあげ「わっ」と泣きあう
7 室町時代の男や女は、声を立てて泣かない 8 鎌倉時代では、男性は「はらはら」と落涙する
9 女性は、「さめざめ」と泣く 10 平安時代は、男性が人前で声をあげて泣いた
11 天皇や道長まで、声をあげて泣いた 12 女性が泣くのは、はしたない 13 他の作品では、女性はどうふるまっているか
14 奈良時代は、平安時代とほぼ同じ 15 おわりに
オノマトペの文法的機能の変遷
1 本稿の目的 2 「ちかっと光る」―「と」をとる― 3 「ちびちびなめる」―「と」をとらない―
4 「かんかんに凍る」―「に」をとる 5 現代語では、オノマトペ以外の情態副詞は「に」をとる
6 奈良時代の「と」をとる擬音語 7 「と」をとる擬態語 8 結果を表す「に」付きオノマトペ
9 過程を表す「に」付きオノマトペ 10 音象徴の効果の違い 11 述語性をもつオノマトペ
12 奈良時代のオノマトペの特色 13 平安時代以降のオノマトペ
奈良時代の擬音語・擬態語
1 はじめに 2 対象とする擬音語・擬態語 3 どんな擬音語・擬態語が見られるのか 4 万葉集に最も多く残存
5 平安時代の擬音語・擬態語 6 平安時代までは残った語 7 現代まで生き延びた語
8 奈良時代特有の擬音語・擬態語の特色―(1)野外の動物の声や音そして様子 (2)ダイナミックな生活音や様子
(3)鈴や玉などの鳴る音― 9 おわりに
平安時代の象徴詞―性格とその変遷過程
1 はじめに 2 象徴詞の弁別基準 3 象徴詞と一般語彙との連続性 4 平安時代の象徴詞の性格
5 奈良時代の象徴詞と比較して 6 奈良時代から平安時代へ 7 おわりに
中古象徴詞の語音構造(1)―清濁に問題のある語例を中心に―
1 はじめに 2 問題点の整理 3 問題解決の方法 4 中古象徴詞の抽出 5 清濁に問題のある語例
6 「ABABと」型の象徴詞を例にとって 7 A音節・B音節ともに清濁不明な場合―(1)語音構造の変遷過程
(2)語誌― 8 B音節の清濁不明な場合 9 A音節の清濁不明な場合 10 中古象徴詞の語音構造の特質
11 おわりに
中古象徴詞の語音構造(2)―撥音・長音・促音に関する問題をふくむ語例を中心に―
1 はじめに 2 撥音に関する問題をふくむ象徴詞―(1)無表記 (2)「う」表記 (3)「い」表記 (4)まとめ― 3 長音に関する問題をふくむ象徴詞 4 促音に関する問題をふくむ象徴詞 5 おわりに
浄瑠璃詞章の象徴詞―その変容―
1 はじめに 2 象徴詞の量 3 象徴詞の類型化 4 象徴詞の固定化 5 象徴詞の長大化
6 新しい象徴詞の導入 7 おわりに
オノマトペ研究の私的回顧
1 四三年前の国語学会で 2 優れた論文に啓発される 3 ちんちん千鳥のなく声は 4 犬は「ぴよ」と鳴いていた
5 擬音語・擬態語辞典 6 語源の追究に応用
Ⅲ 「おべんちゃら」などの語史
いちゃもん
1 辞書に出ていなかった! 2 「いちゃいちゃ」との関係は? 3 戦後生まれの「いちゃもん」
おじや
1 「おじや」と「ぞうすい」 2 女房詞が、一般に普及 3 「おじや」の「じや」って、何?
おべんちゃら
1 「べんちゃら」として登場 2 関西では、サービス精神から出る「褒め言葉」 3 関東では、マイナスイメージの語に
がさつ
1 「がさつ」の語源は? 2 「がさつ」は、戦国時代から 3 戦国時代の「がさつ」「がさつ者」とは?
ぐる
1 「ぐる」は、警察用語 2 「ぐる」は、三百年前に誕生 3 「ぐる」は、「ぐるり」からか
くるま
1 「くるま」という言葉は、古くから 2 「くるま」の語源は? 3 牛車・人力車が、「くるま」
ざっくばらん
1 『或る女』の「ざっくばらん」 2 男性が、好む言葉 3 なぜ、男性が愛用するのか?
じゃじゃ馬
1 男性が、「じゃじゃ馬」! 2 現代では、気性の荒い女性 3 「じゃじゃ」って、何? 4 「じゃじゃ馬」の調教法
しゃぶしゃぶ
1 洗濯のことを、「しゃぶしゃぶ」 2 「しゃぶしゃぶ」と「さぶさぶ」「ざぶざぶ」「じゃぶじゃぶ」 3 水音に欠かせない「ぶ」の音
総すかん
1 語源を考える 2 関西出身の言葉 3 内田魯庵は、俗語好き
たんぽぽ
1 「たんぽぽ」は、室町時代から 2 鼓の音は、「たんぽぽ」 3 たんぽぽ遊び
てんてこ舞い
1 「てんてん舞い」と「てんてこ舞い」 2 「てんてん」も「てんてこ」も、締太鼓の音 3 「てんてこ舞い」は、なぜ勝ったのか?
とことん
1 「徹底的に」の意味は、新しい 2 足拍子と囃子言葉の「とことん」 3 「とことんやれ節」が、仲立ちに
とろろ汁
1 「とろろ芋」は、存在しなかった 2 「とろろ」は「とろとろ」から 3 「とろろ汁」は、室町時代から 4 名物「とろろ汁」の出現
トンカチ
1 一九四一年に、例があった 2 トンカチのことを、何と呼んでいたか? 3 トンカチの醸す意味合い
とんとん拍子
1 さても手拍子、とんとん拍子
2 「とんとん拍子」と「順風満帆」 3 「とんとん拍子」には、ツキの要素が
どんぶり
1 「どんぶり」は、江戸時代から 2 「どんぶり」は、慳貧ぶりの鉢? 3 「どんぶり」は、もともと擬音語
ハタハタ
1 ハタハタという名は、江戸時代から 2 ハタハタは、水戸でも獲れた? 3 ハタハタは、雷の音
パチンコ
1 終戦直後のパチンコ屋 2 パチンコという言葉は、いつ出現したか? 3 「パチパチ」と「ガチャンコ」 4 もう一つの「パチンコ」
ばった屋
1 「ばった」屋は、江戸時代から 2 「ばったり」から生まれた 3 「安値で」の意味を持つ「ばったり」
ひいらぎ
1 昔は「ひひらき」 2 「ひひ」は、ぴりぴりの意味 3 「ら」は接辞、「き」は「木」
ブランコ
1 「ブランコ」は、外来語? 2 古くは、「ゆさはり」「ゆさばり」 3 「ぶらここ」「ぶらこ」の登場
4 「ぶらんこ」に登場
へなちょこ
1 明治三二年が、最も古い例か? 2 明治一三年に作った言葉だった! 3 「へなちょこ」お猪口の再現
ぺんぺん草
1 ぺんぺん草とナズナ 2 名前の由来は? 3 江戸方言だった!
既発表論文・著書との関係