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母子家庭へのソーシャルワーク実践モデル

「当事者主体」に向けた「『揺らぎ』に基づく合意形成」

定価: 8,250 (本体 7,500 円+税)

長年にわたりソーシャルワーカーとして「当事者にとってよい支援」「よりよいソーシャルワーク実践」とは何か、を問い続けてきた著者が、ソーシャルワーク実践の事例を事例研究法で精緻化し、有用な理論としての確立を目指した書。

【著者略歴】
久保田 純(くぼた じゅん)

日本大学文理学部社会福祉学科助教。
1975年生まれ。1998年東洋大学社会学部社会福祉学科卒業。
1998年政令指定都市に社会福祉職として入職し、知的障害者更生施設生活指導員、児童相談所児童福祉司、福祉事務所生活保護ケースワーカー・こども家庭支援担当ソーシャルワーカー・高齢者支援担当ソーシャルワーカーを歴任(~2019年)。
2007年東洋大学大学院社会学研究科福祉社会システム専攻修士課程修了。
2018年東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻博士課程修了。
博士(社会福祉学)。
2019年より現職。社会福祉士。
目次を表示します。
はじめに
序章 本書の枠組み
 1 目的と研究対象
 (1)母子家庭に対するよりよい支援とは何か
 (2)母子家庭・ソーシャルワーカー・社会的文脈・当事者支援システム
 2 研究の意義
 (1)母子家庭への具体的な実践モデルの提示
 (2)母子家庭に対する支援体制や制度・施策への提言
 (3)多様性・複雑性・不確実性の中のソーシャルワーク
 (4)証拠基盤実践モデルの可能性
 3 前提となる視点
 (1)「人間:環境:時間:空間の交互作用」
 (2)ソーシャルワークにおける実践モデル
 (3)実践モデルにおける当事者にとって望ましい視点
 (4)実践モデルを構築する「実践知」
 4 研究方法
 (1)全体の研究構想
 (2)グラウンデッド・セオリーによる実践知の抽出・仮説生成
 (3)事例研究による仮説の精緻および仮説の立証
 (4)実践モデルの生成プロセス
 5 本書の構成
 (1)第1章:グレーザー派グラウンデッド・セオリーによる「実践知」の概念化
 (2)第2章・第3章:文献研究による「実践知」概念からの仮設生成
 (3)第4章・第5章:事例研究による仮説の精緻・練り上げ
 (4)第6章:事例研究による仮説検証・モデル生成
 6 実践モデル:「『揺らぎ』に基づく合意形成」
第1章 母子家庭支援のソーシャルワーク実践における「実践知」
 1 「実践知」の抽出
 2 研究方法
 (1)グラウンデッド・セオリー
 (2)研究枠組み
 (3)倫理的配慮
 3 分析結果
 (1)核概念:関係性の協創
 (2)認識(挟まれ孤立する母子家庭)
 (3)アクション(母親とともに関係性の再生をおこなう)
 (4)変化(安定した生活)
 4 実践知:【関係性の協創】の生成
第2章 母子家庭をめぐる社会的状況
 1 ソーシャルワーカーの「認識」と母子家庭をめぐる社会的状況
 2 研究方法と視点
 3 分析結果
 (1)社会的・文化的領域
 (2)機関・制度施策領域
 (3)当事者・ワーカー領域
 4 母子家庭へのソーシャルワークの構造
 5 ソーシャルワーカーの「認識」との比較検討
 (1)孤立する母子家庭
 (2)母親と支援システムの不調和
 (3)ソーシャルワーカーの「認識」の妥当性
第3章 当事者―ソーシャルワーカー関係
 1 実践知:【関係性の協創】の検証
 2 「『当事者主体』を包有した『合意形成』」
 (1)「当事者主体」と「合意形成」
 (2)当事者とソーシャルワーカーでおこなわれる「合意形成」
 3 「当事者―ソーシャルワーカー関係」とは
 (1)目指すべき「対等な関係性」
 (2)課題となる「非対称性」
 (3)「対等な関係性」と「非対称性」
 4 社会構成主義からみた「当事者―ソーシャルワーカー関係」
 (1)日常生活における二者関係
 (2)社会制度のもとでの二者関係
 (3)社会構成主義からみた「当事者―ソーシャルワーカー関係」
 5 「複雑性」をもつ「当事者―ソーシャルワーカー関係」
 (1)非対称性に対するソーシャルアクション
 (2)「複雑性」を持つ関係性
 (3)目指すべき「よりよい」関係性
 (4)関係性の構築に向けたシステム理論の可能性
 6 実践知:【関係性の協創】の仮説化
 (1)実践知における「アクション」との比較検討
 (2)実践知における「変化」との比較検討
 (3)行政機関におけるソーシャルワークの範疇
 (4)実践知:【関係性の協創】の仮説化
第4章 事例研究①【典型例による仮説の精緻化】:子どものネグレクトを抱える母子家庭への支援事例
 1 事例研究の概要
 (1)事例研究の選択理由
 (2)事例検討の方法
 (3)事例資料の作成方法
 (4)倫理的配慮
 2 事例の概要
 (1)事例の背景
 (2)母親・ソーシャルワーカー・関係機関の意味世界の対立
 (3)スーパーバイザーからの指摘
 (4)当事者支援システム内での話し合い
 3 事例検討会での本事例の振り返り
 (1)当事者支援システムの動態的境界の認識
 (2)「迷い」と「揺らぎ」
 (3)創発による合意形成
 4 本事例の考察と仮説の精緻化
 (1)事例の経過と【関係性の協創】との関連
 (2)精緻化された仮説:「『揺らぎ』に基づく合意形成」の生成
 5 「『揺らぎ』に基づく合意形成」と先行研究の関連
 (1)「揺らぎ」に関する定義づけ
 (2)尾崎(1999)との比較
 (3)須藤(1999)との比較
 (4)樽井(2012)との比較
 (5)谷口(2003)との比較
 (6)衣笠(2015)との比較
 (7)新保(2011)との比較
第5章 事例研究②~⑤【「『揺らぎ』に基づく合意形成」の類型仮説の生成】
 1 複数事例の検討の意義
 2 事例研究②【事実の追試】:知的障害を持つ児童がいる母子家庭への支援事例
 (1)事例選択理由
 (2)事例背景
 (3)母親と長男の意味世界の対立
 (4)合意形成過程の考察
 3 事例研究③【事実の追試】:引きこもりの児童がいる母子家庭への支援事例
 (1)事例選択理由
 (2)事例背景
 (3)母親・長女・ソーシャルワーカーの意味世界の対立
 (4)合意形成過程の考察
 4 事例研究④【理論の追試】:精神的に不安定な前夫との関係性がある母子家庭への支援事例
 (1)事例選択理由
 (2)事例背景
 (3)母親・母親の前夫・ソーシャルワーカーの意味世界の対立
 (4)合意形成過程の考察
 5 事例研究⑤【理論の追試】:不安定な養育環境の母子家庭への支援事例
 (1)事例選択理由
 (2)事例背景
 (3)母親・ソーシャルワーカー・関係機関の意味世界の対立
 (4)合意形成過程の考察
 6 「『揺らぎ』に基づく合意形成」の類型仮説
第6章 事例研究⑥【仮説の効果検証】:当事者支援システムにおける「『揺らぎ』に基づく合意形成」を意図的に実践した事例
 1 事例研究の概要
 2 事例の概要
 (1)事例の背景
 (2)経過
 (3)意味世界の相互理解の不足と対立
 (4)「『揺らぎ』に基づく合意形成」を意図した支援
 3 考察:合意形成前後の比較
 (1)「合意形成」前の状況
 (2)意図的な「『揺らぎ』に基づく合意形成」による「合意形成」後の状況
 (3)本事例での「『揺らぎ』に基づく合意形成」の意義
 4 実践モデル「『揺らぎ』に基づく合意形成」の有用性
終章 母子家庭へのソーシャルワークにおける「『揺らぎ』に基づく合意形成」
 1 本書の結論とその意義
 (1)実践モデル「『揺らぎ』に基づく合意形成」の生成
 (2)実践モデル「『揺らぎ』に基づく合意形成」の可能性
 2 本書の限界と今後の課題
 (1)実践モデル「『揺らぎ』に基づく合意形成」の妥当性
 (2)当事者の視点
 (3)母子家庭支援施策への視点

初出一覧
引用文献
参考文献
おわりに
著者久保田純 著
発行年月日2020年06月30日
頁数308頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2330-8