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日本数学教育史研究 下巻

定価: 22,000 (本体 20,000 円+税)

明治5年の学制公布から昭和30年代の学習指導要領改訂に至る頃までの算数・数学教育の形成を、各時代状況における社会的・教育的思想及び数学文化の表出として論述。

【著者紹介】
上垣 渉(うえがき わたる)
1948年 兵庫県生まれ
1972年 東京学芸大学大学院修士課程修了
現在 三重大学名誉教授 全国珠算教育連盟学術顧問
(数学教育協議会副委員長,三重大学教育学部長,日本数学教育史学会会長を歴任)
目次を表示します。
序文
凡例
参考論文・雑誌について

第Ⅲ部 再創期の数学教育

第24章 算術改造運動から緑表紙教科書へ
1.緑表紙教科書の成立前夜
数理及び数理思想の発展/算術の生活化から生活算術へ
2. 緑表紙教科書の編纂過程
3. 緑表紙教科書の編纂趣旨―数理思想の開発―
4. 塩野における数理思想の開発
5. 偶像化された教科書
6. 数概念形成の教授法について
7. 緑表紙教科書・第1学年上巻の構成
8. 直観主義vs.数え主義の対立図式の成立と解消の過程
9. 数概念形成における1対1対応への着目
10. 黒表紙教科書における数概念の教授法
11. 小括

第25章 緑表紙教科書の概要と特徴
1. 緑表紙の教科課程―比と比例にかかわって―
2. 暗算・筆算・珠算をめぐって
黒表紙における暗算と筆算/暗算の定義及び意義と程度/緑表紙における
暗算/珠算について
3. 文章題について
4. 図形教材について
5. 緑表紙誕生の時代背景

第26章 水色表紙教科書の成立と概要
1. 教学刷新評議会から教育審議会へ
2. 学制改革に関する諸案
3. 教育審議会での初等教育に関する議論
4. 国民学校制度の成立
5. 一源同体異相論による国民学校教科の意義づけ
6. 算術から理数科算数へ
7. 水色表紙教科書の編纂と概要
教科書の種類/授業時数と教材組織(第一期及び第二期・第三期)/陸軍からの要望事項/表紙及び作画/理数科理科との関連

第27章 水色表紙教科書の分析
1. 水色表紙における数理思想
2. 数と計算について
3. 図形教育について
図形指導の3段階論/図形の観察科学―動的連続的な観察―/全体的直覚的把握と分析的論理的考察/図形の実験科学
4. 文章題について
5. 陸軍からの要望事項との関係

第28章 数学教育再構成運動
1. 数学教科調査委員会報告について
2. 調査委員会報告に見る当時の学校系統
3. 調査委員会報告の概要
4. 日本中等教育数学会の動き
5. 数学教育再構成研究会の設立
6. 数学教育再構成の報告会
下村講演について/東部研究会の報告/中部研究会の報告/西部研究会の報告/各部再構成案の比較
7. 小括

第29章 昭和17年数学教授要目とその改定
1. 教育審議会における中等教育改革
中等教育一元化の問題/第一種・第二種制度の問題/中等教科書標準編纂の問題/高等女学校の問題/中等学校令の制定
2. 昭和17年数学教授要目の先行的制定
3. 昭和17年数学教授要目の概要
解説要項(草案)について/昭和17年数学教授要目の特徴
4. 昭和18年中等教育改革に伴う数学教授要目の改定

第30章 戦時期における中等学校と数学教科書
1. 中等学校教科書の標準編纂から五種検定教科書へ
2. 中学校数学の五種検定教科書
算術・代数の教科書/幾何・三角法の教科書/第一種増課用の教科書
3. 高等女学校数学の五種検定教科書
算術・代数の教科書/幾何の教科書/上級用の教科書
4. 師範学校数学の五種検定教科書
5. 中等学校の修業年限の変動と使用教科書
6. 一種検定教科書から国定教科書へ
一種検定教科書の編纂/一種検定教科書の種類/国定教科書の編纂と種類

第31章 戦時期における中等学校数学教科書の概要と特徴
1.中学校数学教科書の概要
中学校一種検定教科書の編纂趣意書/中学校数学教科書の概要
2. 中学校数学教科書(一種検定及び国定)の特徴
第1の特徴:生成的数学観について/第2の特徴:問題中心主義について/第3の特徴:自然的・社会的諸事象からの素材採取について/第4の特徴:課題設定先行方式について/第5の特徴:戦時色を帯びた素材について
3. 数学教科書に対する陸軍要望事項
4. 高等女学校数学教科書の概要と特徴
高等女学校一種検定教科書の編纂趣意書/高等女学校数学教科書の概要/高等女学校数学教科書(一種検定及び国定)の特徴
5. 師範学校数学教科書の概要と特徴
師範学校国定数学教科書の編纂趣意書/師範学校数学教科書の概要/師範学校数学教科書の特徴
6. 外部からの評価
教師・生徒からの視線/数学者からの視線

第32章 終戦に伴う混乱期の初等中等数学教育
1. 民間情報教育局(CI&E)の創設
2. 日本の自主的教育改革の一例―墨塗り教科書―
終戦直後における教育処理/算数教科書及び教師用書の墨塗り/中学校数学教科書の墨塗り/高等女学校数学教科書の墨塗り
3. 昭和21年度暫定算数教科書の成立
文部省とCI&Eとの間の混乱/暫定算数教科書の成立
4. 水色表紙と暫定算数教科書の比較
5. 中学校暫定数学教科書と国定教科書『中等数学』の比較
6. 中等学校修業年限の復旧
7. 日本数学教育会の再建
日本中等教育数学会から日本数学教育会へ/戦時期から戦後にかけての総会及び会誌/日本数学教育会の再建

第33章 占領下における初等中等教育教科課程の成立
1. 米国教育使節団報告書と6-3-3制の成立
2. 初等教育教科課程の成立
教科課程改正委員会の発足/6月15日案/8月1日案/9月26,27日案/11月13日案/11月20日案
3. 中等教育教科課程の成立
日本の中等教育の課題/9月27日案/9月27日案の特色/11月13日案/11月20日案/昭和22年1月9日案と1月10日案

第34章 昭和22年学習指導要領「算数科数学科編(試案)」の成立
1. 学習指導要領という用語の登場
戦前におけるカリキュラムという用語の使用/“course of study”という用語の登場/学習指導要領という訳語
2. 昭和22年『学習指導要領算数科数学科編(試案)』の成立前史
教科課程改正委員会の動向/算数・数学科学習指導要領委員会の発足
3. 昭和22年『学習指導要領算数科数学科編(試案)』の成立期
在米史料の概略/『学習指導要領算数科数学科編(試案)』の成立
4. 昭和22年『学習指導要領算数科数学科編(試案)』の最終的成立
在米史料の概略/『学習指導要領算数科数学科編(試案)』の最終的成立/学習指導要領(算数科数学科編)へのCI&Eの影響

第35章 昭和22年学習指導要領と算数・数学教科書
1. 昭和22年学習指導要領(算数・数学)の概要と特徴
2. 第六期国定算数教科書の概要と特徴
3. 中学校国定数学教科書の概要と特徴
4. 昭和23年の算数・数学科学習指導要領改訂
改訂に至るまでの経緯/一年ずつの足ぶみ/生活と経験の登場
5. 文部省モデル教科書の概要と特徴
生活単元学習の教科書/教育課程文庫の設置/『中学生の数学』の種本
6. 教科書検定制度の成立
7. 算数,数学の検定教科書
昭和24年度の検定教科書/昭和25年度以降の検定教科書

第36章 新制高等学校数学科の成立
1. 新制高等学校の教科課程に関する件(発学156号)の成立
2. 新制高等学校教科課程に関する初期の在米史料
3. 新制高等学校教科課程に関する本格的な検討
昭和21年12月12日―文部省とCI&Eの両案―/12月12日案の特徴/12月15日―総合制・単位制の議論―/12月18日―教科課程表案の合意―
4. 新制高等学校教科課程の最終的な成立
昭和22年2月10日―教科課程表の決定―/3月5日―発学156号の成立―
5. 未完の高等学校学習指導要領数学科編
高等学校学習指導要領数学科編の作成中断/作成中断の背景と理由
6. 未完の高等学校学習指導要領数学科編の内容を探る
中等教育における数学科のコンセプト/新制高等学校用数学教科書の編集開始
7. 新制高等学校数学科の概要と特徴
小西報告「新制高等学校の数学の予想」について/小西報告に見る新制高等学校数学科の概要
8. 在米史料と小西報告との比較検討
基準の引き下げと新制中学校との関連性/経験主義と実用主義/総合制に位置づけられた数学科/ユークリッド幾何への回帰/学問探求(professional pursuits)的科目/準必修的扱い
9. 小括

第37章 新制高等学校数学教科書と教科課程の改訂
1. 新制高等学校数学教科書の種類
2. 新制高等学校数学教科書の発行計画
在米史料に見る発行計画/教科書発行者「中等学校教科書株式会社」/数表の扱いをめぐって
3. 数学教科書の編集過程
新制高等学校数学科のアウトライン/教科書原稿の遅れ
4. 『解析編(1)』,『解析編(II)』の検閲と認可
英訳原稿提出から発行まで/『解析編(Ⅱ)』に関するオズボーンの批評
5. 『幾何編(1)』,『幾何編(2)』の検閲と認可
数学教科書編集の進行状況/『幾何編』の内容変更とCI&Eによる忠告/『幾何編(2)』の植字の許可,印刷の不許可
6. 小括
7. 新制高等学校実施に向けて
設置基準の問題/定時制高等学校の問題/『新制高等学校実施の手引』について/新制中学校と新制高等学校の中等教育としての一体化
8. 新制高等学校教科課程の改訂
9. 「一般数学」について
「一般数学」の性格/「一般数学」の検定教科書

第38章 生活単元学習の再検討
1. 昭和26年の学習指導要領改訂に至るまで
2. 昭和26年学習指導要領改訂とCI&E
3. 生活単元学習とは何か
生活単元と教材単元/生活経験と問題解決
4. 和田義信の単元学習論
和田における生活概念/昭和初期以後の生活算術との関係/単元学習における「問題」/和田の「数学のカリキュラム」をめぐって
5. 生活単元学習への批判
学力低下の問題/数学教育協議会からの批判/日本数学教育会の動向
6. 生活単元指導vs.数学系統指導という対立図式の誤り

第39章 昭和30年代の学習指導要領改訂
1. 高等学校学習指導要領の昭和30年の改訂
2. 昭和33年の小・中学校学習指導要領改訂
3. 昭和33年改訂小学校学習指導要領の概要と特徴
算数科の目標と内容区分/「数と計算」について/「量と測定」について/「数量関係」について/「図形」について
4. 昭和33年改訂中学校学習指導要領の概要と特徴
数学科の目標と内容区分/「数」について/「式」について/「数量関係」について/「計量」について/「図形」について/選択教科(複線コース)の設定
5. 系統学習の意味
6. 昭和35年の高等学校学習指導要領改訂

第40章 数学教育協議会の設立
1. 数学教育協議会設立の経緯
有志が初会合を開く/内外に組織の存在を示す/全国大会の開催/地方組織・サークルの結成
2. 数学教育の現代化に向かって
近代化と現代化/第6回全国大会から第10回全国大会まで
3. 『みんなの算数』の編集と水道方式の誕生
ことの起こり/水道方式の誕生/水道方式の体系化/筆算・暗算論争/「一般から特殊へ」をめぐって
4. 水道方式の一般化をめぐる論争
分析総合方式としての水道方式/一般から特殊へ/分析総合方式について

第41章 水道方式の発展とその後の諸相
1. 水道方式の急激な普及とその反動
毎日新聞での連載と水道方式講習会/水道方式への弾圧
2. 『みんなの算数』始末記
『みんなの算数』の著作者/『みんなの算数』攻撃の楽屋裏/『みんなの算数』発行中止から『わかるさんすう』へ/日本文教出版の中学校及び高等学校の数学教科書
3. 横地派の数教協脱退事件
退会声明書の公表と数教協の見解/数教協全国地区委員会の開催/数教協の『いわれなき非難にこたえる』の発行/横地自身の回顧録/横地の退会の真の理由/数学教育実践研究会の立ち上げ/数実研と横地のその後

第42章 数学教育の再構築をめざして
1. 量の体系化
数教協における量の意識化/昭和33年割合指導要領登場の前夜/藤沢利喜太郎の「量の放逐」への批判/外延量と内包量/度・率・倍・比
2. 和田理論(割合分数)批判
二則主義から関係数へ/分数の乗法・除法
3. 量の理論の構築
未測量・既測量から量の4段階指導へ/比と比例について
4. 折れ線の幾何の体系化
「直観幾何から論証幾何へ」に対する批判/折れ線の幾何の前夜/折れ線の幾何の体系化
5. 数教協の新たな発展
数学教育協議会指標について/数学教育一貫カリキュラムの創造

第43章 遠山啓における数学教育の改革と創造
1. 遠山啓の年譜
2. 遠山啓の時代区分と著作集
遠山啓の時代区分/遠山啓の著作集
3. 遠山啓における教育の目的・任務
遠山の第一期/遠山の第二期(社会の改造と持続,文化遺産の継承)/遠山の第三期/遠山の第四期/遠山の第五期
4. 遠山啓における‟驚異の諸年”-昭和33年~34年-
5. 数学教育の近代化と現代化
ペリー運動への言及/近代化から現代化へ
6. 現代化から数学教育一貫カリキュラムの創造へ
「超現代化」への批判/数学教育一貫カリキュラムの創造から授業研究へ
7. 遠山啓の授業論・学校論
楽しい授業の発見/楽しい学校の提唱と‟点眼鏡”批判/自動車学校型の学校と劇場型の学校/教育における三層構造としての‟術・学・観”
8. 遠山啓と藤沢利喜太郎
両人の対比的年表/量と数をめぐって/遠山による異説藤沢論/藤沢と遠山‟二大巨人”の人間像の一端

数学教育史関係論文等一覧
あとがき
書名索引(和書)
書名索引(洋書)
人名索引
著者上垣渉 著
発行年月日2022年09月30日
頁数918頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2443-5

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