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「語る子ども」としてのヤングアダルト

現代日本児童文学におけるヤングアダルト文学のもつ可能性

定価: 4,950 (本体 4,500 円+税)

ヤングアダルト文学を現代児童文学の潮流のなかに捉え、理論的検討を踏まえて作品を読解。「語る子ども」を通して、子どもと大人の区分に対する新たな視座を示す。

★☆★第47回日本児童文学学会奨励賞 受賞★☆★

著者略歴
小林 夏美(こばやし なつみ)

2010年 お茶の水女子大学文教育学部人文科学科卒業
2012年 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ジェンダー社会科学専攻博士前期課程修了
2019年 白百合女子大学大学院文学研究科児童文学専攻博士課程単位取得退学
2021年 博士(文学)の学位取得(白百合女子大学)
現 在 聖学院大学・帝京大学非常勤講師、白百合女子大学児童文化研究センター研究員、白梅学園大学・白梅学園短期大学子ども学研究所客員研究員
目次を表示します。

序章 現代児童文学としてのヤングアダルト文学
一、日本におけるヤングアダルト文学研究の現状
二、「タブーの崩壊」とヤングアダルト文学との関連性
三、現代児童文学としてのヤングアダルト文学の展開
四、本書の構成

第一章 子どもは語ることができるか―「異文化としての子ども」から「語る子ども」へ
一、「異文化としての子ども」を語る所在の曖昧さ
二、「異文化」化による区分の固定化
三、「大人並み」ではない視点での語り
四、「語りえない子どもについて、子どもの視点で語る」のは誰か
五、「翻訳のパフォーマティヴィティ」が示唆する「語る子ども」の可能性

第二章 「語る子ども」として生き延びる可能性―「大人になる」ことと主体化=服従化
一、主体化=服従化としての「大人になる」ことの問題
二、主体化=服従化によるエンパワメントの限界
三、主体化=服従化を超出する行為能力
四、責任=応答可能性に基づく語り
 ⑴ 二者関係への着目
 ⑵ 特異性と責任=応答可能性
五、「語る子ども」として生き延びること

第三章 忘却される「大人になる」ことへの抗い―梨木香歩『西の魔女が死んだ』
一、「大人になる」ことを問う構成
 ⑴ 一般的な主体形成のオルタナティヴとしての「魔女修行」
 ⑵ オルタナティヴとしての「魔女修行」自体を問う構成
 ⑶ 「魔女修行」が伴う語る力の不均衡
二、「大人になる」ことを問う力の行方
 ⑴ 「魔女」の規範を超え出る愛の追求
 ⑵ 語る力の不均衡を介した愛の可能性の忘却
 ⑶ 忘却を支える生存への欲望
三、「大人になる」ことへの問いの持続可能性
 ⑴ 成長の名の下での問題の個人化
 ⑵ 個人化を超え出る語りの可能性
 ⑶ 忘却の内に捉えられる「語る子ども」の可能性

第四章 「大人になる」ことの困難、子どもとして語る困難―岩瀬成子『もうちょっとだけ子どもでいよう』
一、「大人になる」ことの困難と語る力の問題
 ⑴ 規範意識と実際の行為との乖離
 ⑵ 「大人になる」ことへの懐疑
 ⑶ 自分自身を説明することの困難
 ⑷ 不均衡な語る力の割り振り
二、「語りえない子ども」の語る力の所在
 ⑴ 免責と相関した声の無価値化
 ⑵ 語る力の所在を示唆する死の可能性
 ⑶ 「語る子ども」としてヤングアダルトを捉える視野
三、「語る子ども」としての語りを支える責任=応答可能性
四、「翻訳のパフォーマティヴィティ」がもたらす語りの可能性

第五章 「語る子ども」としての「サバイバル」―梨屋アリエ『スリースターズ』
一、「語る子ども」としての力の獲得の必要性
 ⑴ 「ネグレクト状態」の「サバイバル」という問題設定
 ⑵ 存在可能性を賭けた語る力の獲得の問題
二、否認された存在可能性の忘却
 ⑴ 存在可能性の希求と断念
 ⑵ 三咲季自身の可能性とともに忘却される弥生
三、抵抗する語りにおける否認行為の反復
 ⑴ 否認による死の恐怖と承認による行為能力の獲得
 ⑵ 再分断による否認行為の反復
四、責任=応答可能性に基づく承認可能性の模索
 ⑴ 二者関係への焦点化と否認への気づき
 ⑵ 承認の基盤としての責任=応答可能性
五、「語る子ども」の可能性をもたらすスリースターズの差異と「翻訳」

第六章 「語る子ども」としての語りの展開―いしいしんじ『麦ふみクーツェ』
一、ヤングアダルト文学としての『麦ふみクーツェ』
 ⑴ いしいしんじ作品のもつ「攪乱」性
 ⑵ 『麦ふみクーツェ』における「大人になる」ことへの問い
二、自分自身を承認する困難
 ⑴ 大きな身体の否定
 ⑵ クーツェの暗示する構築性への問い
三、行為能力への問い
 ⑴ 承認にかかわる行為能力の問題
 ⑵ おじいちゃんによる構築を問う必要
 ⑶ 用務員さんによる行為能力の示唆と放棄
 ⑷ 未知のものへの責任=応答可能性
四、特異性としての存在理解
 ⑴ 責任=応答可能性の基盤としての聞きとる行為
 ⑵ 聞きとる行為がもたらす特異性への意識
五、「翻訳のパフォーマティヴィティ」を通じた語りの展開
 ⑴ 翻訳行為への着目
 ⑵ 特異性のもたらす「翻訳のパフォーマティヴィティ」の必要性
 ⑶ 責任=応答可能性に基づく「翻訳のパフォーマティヴィティ」
六、「翻訳のパフォーマティヴィティ」によって「語る子ども」

終章 「語る子ども」の形象がもたらすもの

参考文献

あとがき
著者小林夏美 著
発行年月日2023年05月15日
頁数306頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2474-9