博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

犯罪からの子どもの安全教育プログラムに関する基礎的研究

小学校における体験型安全教育の構築を目指して

定価: 7,700 (本体 7,000 円+税)

疑似的危機遭遇体験を通して、子どもたちが対峙した危機を回避・克服するための基礎的能力作りの効果を検証。体験を中心とする安全教育プログラムの開発を目指す。

【著者略歴】
清永奈穂(きよなが なほ)

1971年生まれ。日本女子大学学術研究員、株式会社ステップ総合研究所長、NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事
日本女子大学大学院人間社会学部教育学専攻博士課程後期課程単位取得満期修了。博士(教育学)
文部科学省資質の高い教員養成(GP)研究員、科学技術振興機構(JST)研究員、警察庁新しい安全安心まちづくり研究委員会委員、内閣府「子ども若者育成支援推進のための有識者会議」委員等歴任。現在こども家庭庁こども家庭審議会基本政策部会臨時委員。
静岡県体験型防犯講座「あぶトレ」、愛知県警察本部体験型防犯講座「BO-KENあいち」プログラム監修及び講師養成、千葉県警察本部子どもの安全対策動画「ちばっこ いやです、だめです、いきません」、監修等。
主な著書に、「少年非行の世界」(共著、有斐閣)、「世界のいじめ」(共著、信山社)、「犯罪からの子どもの安全を科学する」(共著、ミネルヴァ書房)、「犯罪者はどこに目をつけているか」(共著、新潮社)、「犯罪と地震から子どもを守る」(単著、小学館)、「犯罪から園を守る・子どもを守る」(単著、メイト社)、「いやです、だめです、いきません 親が教える子どもを守る安全教育」(単著、岩崎書店)、他。
目次を表示します。
はじめに
 文献および注

第1章 本論文の枠組み
 第1節 本論文の目的及び特色と意義
  1 本論文の目的
  2 本論文の特色と意義
   1)本論文の特色―対処的対応から教育的対応へ―
   2)開発される犯罪から子どもを守る安全教育プログラムの特色
   3)本論文の意義
 第2節 本論文の背景
  1 子どもの安全を巡る犯罪情勢の揺らぎと市民意識に見る危機感
   1)警察統計が示す子どもの安全の揺らぎ
   2)市民が抱く子どもの安全についての不安感
  2 世界的視野からみる犯罪から子どもを守る安全教育志向
 第3節 犯罪から子どもを守る安全教育の定義と教育プログラムの大枠
  1 犯罪から子どもを守る安全教育の定義
   1)安全教育の定義
   2)安全教育の具体的目標と範囲
  2 犯罪から子どもを守る安全教育の特徴
   1)他の教科等と比較しての特徴
   2)犯罪から子どもを守る安全教育の構造的特徴
   3)犯罪から子どもを守る体験型安全教育プログラムの組み立て
  3 犯罪から子どもを守る安全教育組み立てに際し直面する問題
   1)抱える二つの問題
   2)宿命を超える手立て
 第4節 本論文の研究過程と予想される研究成果
  1 研究過程
  2 研究成果
 第5節 基本的用語の定義
  1 子ども
  2 カリキュラムとプログラム
  3 犯罪(行為)
  4 犯罪から子どもを守る体験型安全教育
 第6節 先行研究
  1 子どもの安全確保と教育に関する歴史的過程から見た先行研究の検討
   1)被害者学の誕生とそれに沿った子ども安全研究の発展
   2)心と体の健康育成を目指す子ども教育へのパラダイムシフト
   3)本格化する安全教育と次世代育成
   4)大教大附属池田小学校事件の衝撃と研究・開発の加速化
  2 犯罪から子どもを守る安全教育をリードする主要5先行研究の批判的検討
   1)米国CAPによる暴力防止プログラム検討
   2)英国PSHE教育カリキュラムによる体験型安全教育プログラム検討
   3)地域安全マップ作りによる危機予測・回避プログラム検討
   4)文部科学省GP研究から見た体験型安全教育プログラム検討
   5)大教大附属池田小学校「安全科プログラム」検討
  3 先行研究から見た本論文の独自性
 章の終わりに-犯罪から子どもを守る安全教育の時間的変遷の検討に向けて-
 文献および注

第2章 戦後における犯罪からの子どもの安全に関する取り組みの時間的変遷―対処的対応から教育的対応へ―
 第1節 第1期・前時代期―1945年~1998年―
  1 暗数化の時期―1945年~1949年―
  2 少年問題顕在化時期―1950年~1979年―
  3 質量悪化前兆時期―1980年~1998年―
 第2節 第2期・対処的対応期―1999年~2011年―
  1 全般的特徴
  2 対処的対応期の二つの状況
   1)緊急対応時期―1999年~2007年―
   2)安全教育授業正規化検討開始時期
  3 対処的対応期に進められた対策
   1)緊急対応時期に進められた対策
   2)授業正規化検討開始時期の対策
 第3節 第3期・教育的対応準備期―2012年~2019年―
  1 全般的特徴
  2 対処的対応から教育的対応準備期へ
  3 進む安全教育正規授業化
   1)中教審・最初の動き2012年
   2)スポーツ・青少年分科会学校安全部会の後押し2014年
   3)安全教育の正規授業化確認2017年
   4)2020年教育的対応期に向けて
 第4節 第4期・これからの教育的対応期2020年以降
  1 2020年犯罪から子どもを守る安全教育像
   1)実施される犯罪から子どもを守る安全教育の問題
   2)犯罪から子どもを守る安全教育に求められる問題克服法
  2 現在行われている犯罪から子どもを守る安全教育の批判的検討
   1)大教大附属池田小学校「安全科」プログラムについての検討
   2)現行「地域安全マップ作り」についての検討
 章の終わりに-質を高めるための新しいプログラムの開発-
 文献および注

第3章 英国に学ぶ犯罪から子どもを守る安全教育
 第1節 鏡としての英国の安全教育が指し示す二つの特徴
  1 英国に見る明確な教育目標
   1)2000年ナショナル・カリキュラムの安全教育目標「市民づくり」
   2)2018年改正の安全教育の目標「寛容の心を持った市民づくり」
  2 英国に見る発達段階に沿ったプログラム編成
  3 英国に見る体験重視の安全教育
   1)教科書による安全教育
   2)体験施設での安全教育
  4 英国に学ぶ安全教育から切り離せぬ座学と経験
 第2節 我が国の文部科学省が示すこれからの安全教育
  1 「第2次計画」中に見る教育目標と教育過程
  2 文科省設定の「教育目標」と「達成過程」に関する幾つかの問題
   1)問題解決志向型安全教育の限界
   2)危機予測と回避行動形成に偏った安全教育の継続
 第3節 安全教育の具体的目標としての子どもを「大人に育てる」
  1 問題
  2 求める「人間像」が備えねばならない前提条件
   1)今後進む並列系複線型の安全教育を満たす条件
   2)現実的であり実現可能性のある「人間像」
   3)いかなる危機にも応じることのできる「人間像」
  3 犯罪からの危機が紡ぎ出す人間像「大人」
   1)犯罪からの危機が求める最終人間像
   2)安全教育の具体的教育目標「子どもを大人に育てる」
 章の終わりに-子どもを大人に育てるプログラム作りを-
 文献および注

第4章 犯罪から子どもを守る安全教育モデルプログラム枠組みの組み立て
 第1節 安全教育モデルプログラム枠組みとそれに関わる先行研究の検討
  1 安全教育プログラム作りに関わる二つのモデルプログラム枠組み
   1)理論モデルプログラム枠組みの開発
   2)実践モデルプログラム枠組みの開発
  2 モデルプログラム枠組み作りに先だっての前提条件
  3 モデル枠組み作りに関する先行研究
 第2節 犯罪から子どもを守る安全教育理論モデル枠組みの作成
  1 理論モデル枠組みの中核となる二つの教育目的
   1)二つの目的
   2)安全教育プログラム理論モデル枠組みの原型と梯状三層構造
  2 安全基礎体力論に基づく原型モデル枠組みの修正
   1)安全基礎体力GP2006
   2)安全基礎体力GP2006を基にした修正原型モデル枠組み
   3)GP2006批判と最終理論モデル枠組みの提示
 第3節 犯罪から子どもを守る安全教育プログラム作りにおける実践モデル枠組みの構築
  1 開発を目指す実践モデル枠組み作成の前提条件
  2 実践モデル枠組み作成のための子どもの犯罪被害遭遇体験実験
   1)実験の枠組み
   2)実験結果
   3)考察
  3 犯罪から子どもを守る安全教育プログラム実践モデル作り
   1)基層「大人を育てる部分」の働きについて
   2)中層「問題解決部分」の働きについて
  4 理論モデル枠組みを下敷きとする最終実践モデルの提示
   1)表4-2の改めての整理
   2)最終実践モデル枠組みの提示
 章の終わりに-実践プログラムモデル枠組みから指導プログラムへ-
 文献および注

第5章 犯罪から子どもを守る安全教育プログラム中枢部「犯罪者行動」の検討
 第1節 犯罪者及び被害者行動の計測計画
  1 研究の枠組み
   1)目的
   2)意義
   3)分析される行動内容
   4)方法
 第2節 警察を中心とした犯罪者行動全般に関する実証調査
  1 1992年犯罪者行動調査
   1)調査概要
   2)主な調査結果
  2 2004年静岡専門家犯罪行動分析検討会研究調査
   1)調査概要
   2)主な検討結果
 第3節 GP研究を中心とする犯罪者及び被害者の行動に関する実証実験
  1 接近距離・追いかける距離・逃走距離に関する実証実験
   1)実験概要
   2)主な実験結果
  2 逃走開始距離に関する実証実験
   1)実験概要
   2)主な実験結果
  3 すれ違い距離に関する実証実験
   1)実験概要
   2)主な結果
 章の終わりに-具体的子ども指導プログラム作りに挑む-
 文献および注

第6章 子どもへの指導を目指した犯罪から子どもを守る安全教育プログラムの開発
 第1節 子どもへの指導を目的としたプログラム開発のための基本フレームの検討
  1 指導プログラム作りの全体のプロセス
  2 子どもへの指導を目的とするプログラム基本フレームの作成
 第2節 子どもへの指導を目指した戦略的指導プログラムの開発
  1 犯罪から子どもを守る安全教育に関する戦略的指導プログラムの枠組み
   1)用語「戦略的指導プログラム」の定義
   2)戦略的指導プログラム作成の前提条件
  2 戦略的指導プログラムを構成する14の対応力の定義及び内容検討
  3 戦略的指導プログラムの完成
 第3節 子ども指導を目指した戦術プログラムの開発
  1 犯罪から子どもを守る安全教育に関する戦術プログラムの枠組み
   1)戦術プログラム作りの前提条件
   2)子ども指導における安全標準プログラムの限界
  2 子ども指導の戦術プログラムの開発
   1)教えねばならない「力」の整理
   2)戦術プログラム「はさみとかみはおともだち(ハサミとカミはお友だち)」
   3)社会各層が判定する「必要な身に付ける力」
  3 子ども指導のための「ハサミとカミはお友だち」指導プログラムの開発
 章の終わりに-犯罪から子どもを守る安全教育の子どもへの指導を目指して-
 文献および注

第7章 犯罪から子どもを守る安全教育の実践と効果測定
 第1節 効果及び評価測定法の全体枠組み
  1 効果及び評価調査の全体枠組み
   1)目的
   2)調査内容及び調査対象
   3)研究方法及び調査期間
  2 体験授業のための子どもへの指導員の養成
 第2節 授業体験と児童効果測定調査の結果
  1 調査の枠組み
   1)目的
   2)調査回数・調査期日・分析対象子ども数
   3)調査対象校及び調査対象学年の選定理由
   4)効果測定質問項目の決定と調査票の設計
   5)調査票と正答理由
   6)正答率・誤答率・不明率
   7)実践(授業)方法
  2 調査結果
   1)体験授業前・授業後そして1年半後調査における正答率の経時分析
  3 授業体験と児童効果測定調査結果のまとめ
 第3節 授業観察者評価測定調査の結果
  1 調査の枠組み
   1)目的
   2)調査対象者・調査期間
   3)調査票配布法と有効回収率
   4)評価測定質問項目の決定と調査票の設計
  2 主たる結果
   1)全観察者による評価結果
   2)小学校教師による評価結果
    (1)全体的傾向
    (2)実用性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (3)将来有用性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (4)受け入れ可能性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (5)学習困難性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (6)指導内容納得性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (7)他に比べての有用性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (8)継続的指導希望性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (9)早期開始希望性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (10)普及希望性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
    (11)改善の余地性の面からの「ハサミとカミはお友だち」プログラムの評価
  3 授業観察者効果測定のまとめ
 章の終わりに-「ハサミとカミはお友だち」プログラムを授業としていかに実装化するか-
 文献および注

第8章 犯罪から子どもを守る体験型安全教育の実装化を探る
 第1節 実装を巡る問題
  1 実装化を目指す理由
  2 言葉「実装」の定義
  3 実装化に際しての前提条件
  4 実装化組織の幾つかのパターン
  5 基本パターンの評価軸と評価
 第2節 3組織による実装化可能性の検討
  1 教委主導型実装化推進の診断
   1)問題
   2)安全教育に背を向ける教師たち
   3)教委主導型による実装化推進の可能性
  2 学校―外部組織連携型実装化推進の診断―
   1)連携のパターン
   2)連携による静岡方式の実装化に伴う問題
  3 外部組織単独運営型実装化推進の診断
   1)新しい外部組織単独型取り組み誕生の予兆とその背景
   2)可能性としての警察による子ども安全教育への本格的取り組みと問題
 第3節 現時点で理想とする実装化システムの検討
  1 現状に見る進捗状況
  2 検討に先立つ確認事項
  3 目指すべき実装化システム
 章の終わりに-犯罪から子どもを守る安全教育プログラム作りの完成を目指して-
 文献および注

第9章 犯罪から子どもを守る安全教育プログラムづくり基礎的研究の成果および今後の展望
 第1節 本研究の成果と意義
  1 成果
 第2節 課題1 成長発達段階に即した安全教育プログラムの一層の開発
  1 問題
  2 課題1の解決に向けて
   1)園・小・中学校一貫プログラムの一層の開発
   2)多様な成長・発達に応じたプログラムの一層の開発
 第3節 課題2 効果的安全教育達成のための授業法の開発
  1 問題
  2 課題2の解決に向けて
   1)教授法の開発
   2)教材の開発
 第4節 危機を通し大人にするプログラムの本格的開発
  1 問題
  2 安全教育に課せられた最終課題の解決に向けて
 章の終わりに-安全教育確立を目指し止まることのない追及を-
 文献および注

終わりに
基礎資料
参考文献一覧
索引
謝辞
著者清永奈穂 著
発行年月日2023年08月31日
頁数398頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2479-4