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平安時代文学語彙の研究 正編

定価: 18,700 (本体 17,000 円+税)

中古文学語彙の形態や意味の世界を微視的に追跡し、万葉語や漢語、歴史学と共通の課題をもつ領域にも及んで観察。注釈史上の疑問点を詳解する。
目次を表示します。

第一部 序説
古典語彙研究の方法
 一 語彙―観察的立場―
 二 語彙自覚の発生
 三 同義語・類義語・対義語
 四 位相論への一つの見地
歌語論序説 その伝統性と自由性
 一 歌語
 二 歌語意識
 三 歌語と俳言
 四 歌語の伝統性
 五 歌語の自由性
文学語彙としての俗語
一 俗語
 二 言語描写の写実度
 三 「たうぶ」の俗語性
 四 「たまふ」「たうぶ」の消長
 五 歌謡と俗語
 六 俗語的なもの
 七 今昔物語の言語
類義語の意味論的処理「やさし」「はづかし」の間
一 同義語と類義語
二 「やさし」「おもなし」「はづかし」の基本的な意味
三 「はづかし」「やさし」の意味変化の過程
四 栄花物語の「やさし」の意義
五 大鏡の「やさし」の意義
六 中世の「やさし」の意義
七 「おもなし」の意義の転換
 八 おわりに
語彙事実としての対義語 朝霧・夕霧・夜霧
一 夜霧(よぎり)という語
 二 万葉の訓「ヨギリ」への疑い
 三 「よぎり」の登場
 四 「ゆふぎり」の古義
解釈における誤認の契機 音韻・表記・意味
 一 「なぜうに」「なでふ」
 二 「なぜに」
解釈に前提されるもの「声のとづかんずる調子」
 一 各時代の語彙的辞書があったら
 二 声のとつかんする調子
 三 「とづく」の語史
第二部 意味
活用形式の分岐派生と意味
 一 形態の変遷と意味
 二 「わする」の古活用
 三 「隠る」の古活用と意味
四 「はるく」の活用と意味
五 「さすらふ」の活用と意味
六 「ほころぶ」の活用と意味
形態的区分と意味的区分「しのぶ」の活用について
 一 万葉の「しのふ」と「しのぶ」
 二 平安中期までの「しのぶ」群の語彙的事実について
 三 「忍ぶ」四段の系譜
 四 四段形式の拡大
共時態における語義の統一性「おぼろけ」の意味の変容
 一 意味の反転とその諸契機
 二 「おぼろけ」の清濁
 三 「け」と「げ」
 四 意味の反転と諸注
 五 文型による整理
 六 掛け詞に現れた「おぼろけ」の特殊性
 七 特殊例の解釈
 八 各文型の分布
副詞「ことしも」の意味について
 一 更級日記の一節
 二 「ことしも……やうに」の使用例
 三 おわりに
「うちに」が接続する文について文型と意味
 一 接続形式について
 二 「うちに」接続の文の型と意味の型
 三 土佐日記における「うちに」の文の型
 四 落窪物語における「うちに」の文の型
 五 宇津保物語から
 六 蜻蛉日記から
 七 源氏物語の「うちに」の文の型と意味
 八 結び
「いづくはあれど」考 文型と意味
 一 佐伯博士説ののち
 二 「いづくはあれど」と「いづれもあるを」の比較
 三 こそ・だに・は・も
語義特殊化の過程 けし・けしう・けしからず
 一 形容詞「けし」
 二 副詞「けしう」
 三 「けしうはあらず」の意味のさまざま
 四 「けしからず」の意味の成立過程についての臆断
「おはさふ」「おはさうず」存疑
 一 はじめに
 二 「おはさうず」類の構造
 三 複数主格の問題
 四 「~あふ」との比較
 五 むすび
 六 付記
副詞「かつがつ」の系譜
 一 はしがき
 二 方言に残存する「かつがつ」
 三 宣長説批判
 四 「かつ」から「かつがつ」へ
 五 副詞「かつ」の同系語
 六 「たまればかてに」考
 七 「がてら」「がてり」
 八 補説
文学語彙の周辺「しこる」「ししこらかす」私注
 一 論のあらまし
 二 「しこる」「あきじこり」
 三 諸説批判
 四 「しこる」の意義
 五 「LLこらかす」の解釈
 六 「しこりこめやも」の解釈
 七 「あきじこり」の解釈
 八 古代の「しこ」の意義
注釈の混態について「あふなあふな」と「おほなおはな」
 一 はじめに
 二 「あふなあふな」の意味
三 「あふなし」の意味
四 「あふさわに」
五 「おほなおはな」の意味
「中の十日」の意義をめぐる問題
 一 源氏物語の用例から
 二 中世の言語における「中の何日」という数えかた
 三 天祿三年八月歌合序の問題
 四 平安朝における「中の十日」類の意義
 五 千載和歌集奏覧の日時
 六 「中の何日」式への転換過程
第三部 位相
上代語彙における「しか」と「さ」との交渉
 一 序
 二 万葉語について
 三 宣命の言語について
 四 訓点語の場合
五 伊勢物語の「さ」
六 竹取物語の「しか」と「さ」
七 土佐日記の「しかれども」
八 宇津保物語の言語描写
九 源氏物語における「しか」
一〇 「しかじか」と「ささ」
一一 文体的要素としての「しか」
一二 今昔物語の「しか」と「さ」
一三 宇治拾遺物語の「しか」
一四 平家物語から
一五 徒然草の「しかも」
一六 歌語の場合
平安朝数名詞考 仮名文における表記とその読み方
 一 問題点
 二 表記の観察
 三 「十よ日」類の読み方
 四 「十日よひ」等の処理
 五 漢字表記の数名詞をめぐる問題
「ずちなし」考
 一 「すぢなし」「ずちなし」の弁
 二 「すべなし」「ずちなし」の弁
 三 「すべなし」の感情的陰影
 四 大鏡の「ずちなし」
 五 その他の作品から
 六 「すぢなし」について
平安文学と漢語 天下・世界・世間
 一 「ていけ」「てんけ」の疑い
 二 「天下」呉音説
 三 漢呉音両形の共存
 四 「あめのした」
 五 平安文学語彙と「天下」
 六 「世界」と「世間」
宇津保物語の中の漢語
 一 はしがき
 二 漢語彙弁証の基礎的要件
 三 「ふせうととのはず」解
 四 「天下」呉音説補考
 五 「けうさう」考
 六 「かんてう」考
 七 「闕巡」考
 八 本文批評と漢語
 九 特異に見える漢語
源氏物語における漢語彙の位相
 一 女性と漢語
 二 漢語の表記をめぐる問題
 三 漢音と呉音(一)
 四 漢音と呉音(二)
 五 漢音と呉音(三)
源氏物語漢語彙弁証
 一 はしがき
 二 「さが」字音説への疑い
 三 「きゃうざく」考
 四 「そしうなる物の師」考
 五 むすび
漢語彙研究の一課題 漢語らしさをめぐって
 一 漢語彙研究の一課題
 二 「たいだいし」考
 三 「さうざうし」考
 四 「らうたし」「らうらうじ」考
 五 「びびし」考
国語学・解釈関係著者論文目録
事項索引
語彙索引
著者原田芳起 著
発行年月日1962年09月15日
頁数680頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-0702-5