ディドロ 限界の思考
小説に関する試論
定価:
8,250
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7,500
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序 文
第一部 小説の方法
Ⅰ章 特権的な話者の不在
1:一方向的な語り
『修道女』 不在の読者へのよびかけ
『ブルボンヌの二人の友』 相対化されつづける証言
2:双方向的な語り
『ラモーの甥』 対話者間の葛藤
『これは作り話ではない』 聴き手に邪魔される語り手
3:重層的な語り
『ド・ラ・カルリエール夫人』 世間の一員としての語り手
『ブーガンヴィル航海記補遺』 転倒につぐ転倒
Ⅱ章 作品世界の俯瞰不能性
1:物語の予測不能性
唐突な始まり―コント三部作の冒頭
アクシデントの連続―『ある父とその子どもたちの対話』を中心に
終わりの宙吊り―『ミスティフィカシオン』を中心に
2:翻訳と欠落
『おしゃべりな宝石たち』 「原典」から遠く離れて
『ブーガンヴィル航海記補遺』 「自然」の成形の不可避性
Ⅲ章 『運命論者ジャックとその主人』
1:証言とその主体
方法としての多声性
あらゆる話者の限界
2:不可知なものの明示
「運命」としての物語、その不可知性
決定的な「原典」の不在、物語の欠落・断片化
第二部 個としての人間
Ⅰ章 認識、判断、その限界
1:全知の不可能性
「水星の周転円の上」、「みじめな学問」―『ラモーの甥』における二つの比喩
戦場のなかの個―『運命論者ジャックとその主人』におけるある描写の場面
「仮説」を壊す「実験」―『おしゃべりな宝石たち』第一巻・第二十九章のアレゴリー
2:認識、判断、その決定不能性
記号の解釈の分裂―馬の「お告げ」と「葬列」の意味
善悪の決定不能性―グッスの人物像を中心に
Ⅱ章 意志、統御、その限界
1:意志、統御、その限界
自由意志の否定―ジャックの召使遍歴
意図と結果の齟齬―宿屋の「おかみ」とタニエ
言葉と行動の齟齬―ジャックとセネカ
意識と身体―デブロッスの証言
2:誘惑、陰謀、その帰結
「私」、グッス、ド・サンフロランタン家の執事、ユドソン
ド・ラ・ポムレー夫人とド・サントゥアン騎士
ジュザンヌ
Ⅲ章 懐疑と肯定
1:懐疑と肯定
ビュリダンの驢馬の不可能性―『ダランベールの夢』の一節
懐疑と次善の選択―『哲学断想』と『ある父とその子どもたちの対話』
「後世」にむけて―『ド・ラ・カルリエール夫人』と『運命論者ジャックとその主人』における矯正可能性のテーマ
2:この世界の肯定
運命論による自己解放
この世界の肯定
交換不能な個の生成―ジャック、デロシュ、フェリックス
第三部 個と共同体
Ⅰ章 性愛と一夫一婦制
1:可変性の原理
絶えざる生成変化―『盲人に関する書簡』におけるソーンダーソンの世界観
「雲」、「霧」、ラモー
2:性愛の逆説
性愛の可変性―『運命論者ジャックとその主人』の一節、『これは作り話ではない』におけるガルドゥイユの発言
貞節、嫉妬、その不可避性
3:一夫一婦制の不可能性と不可避性
出会い、結婚、その破錠―コント三部作、『運命論者ジャックとその主人』
一夫一婦制の外見と内実―『おしゃべりな宝石たち』
一夫一婦制の心理的・政治的機能―『ブーガンヴィル航海記補遺』
一夫一婦制の不可避性―「三つの法典」の分析を中心に
Ⅱ章 一夫一婦制のオルタナティヴとその限界
1:優学生とその破錠―ユートピア批判としての『ブーガンヴィル航海記補遺』
2:「みんな」に攻囲される「私」―監獄批判としての『修道女』
監獄としての修道院
監視、処罰、スペクタクル
遍在する監視網
逸脱する「私」、その生理と戦略
3:無法者たち、その友愛の共同体―マンドランの一党、ブルボンヌの密輸入
補論:規範からの逸脱
「酵母」としてのラモー
通り、街道、宿屋―コードなき旅人たちの空間
哲学者(フイロゾフ)、あらゆるものの批判者
結 論
1:本研究の成果
2:本研究の限界と今後の展望
注
参考文献
あとがき