博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

地域子育て支援センターのエスノグラフィー

「親子の居場所」創出の可能性

定価: 10,450 (本体 9,500 円+税)
地域子育て支援センターや児童相談所の詳細な事例を元に、居場所づくりによって親子の主体性を回復させる援助者の実践と、現代社会におけるその意義・課題を言及。

【著者略歴】
松永愛子(まつなが あいこ)
1978年 神奈川県に生まれる
2001年 日本女子大学家政学部児童学科卒業
2004年 日本女子大学大学院博士課程前期家政学研究科児童学専攻修了
2008年 日本女子大学大学院人間生活学研究科人間発達学専攻博士課程後期修了
日本女子大学大学院人間生活学研究科 博士(学術)学位取得
2007年4月より岡崎女子短期大学講師を経て、2012年4月より目白大学講師
目次を表示します。
第一章 序論
 1 現代社会において求められる福祉制度のあり方
 2 子育ての領域を研究する意義
 3 「地域子育て支援センター」を研究する意義
 4 エスノグラフィー研究を行う理由
  4.1 質的研究を行う理由
  4.2 エスノグラフィーの特徴
 5 各章の研究方法
 6 本書の進行
 注
 文献
第二章 「A市子育て支援センター」における「親子の居場所」性
 1 「A市子育て支援センター」の概要と研究方法
  1.1 「A市子育て支援センター」の概要
  1.2 研究方法
 2 「A市子育て支援センター」の一日
  2.1 11月27日の親子とスタッフの関わり
  2.2 フリースペース内における親子とスタッフの行動の特徴
   2.2.1 親子の行動の特徴
   2.2.2 スタッフの行動の特徴
 3 「A市子育て支援センター」の特徴
  3.1 子どもを媒介とした交流
   3.1.1 交流―来所者間の情動的関係
   3.1.2 交流―親子の主体性の獲得
  3.2 育児事例の交換
   3.2.1 育児事例の交換―来所者間の情動的関係
   3.2.2 育児事例の交換―親子の主体性の獲得
  3.3 受容―親子の自発的来所により生成するスタッフと親子の対等な立場と受容的態度
 4 親子の居場所の生成過程
 注
 文献
第三章 「児童相談所」における事例報告の言説分析
     ―援助過程に働く「客観主義的規範」―
 1 事例報告原文の紹介
 2 事例報告の言説分析
  2.1 事例記述者が暗黙裡に示す「読み方の指示」
  2.2 事例記述者が描こうとした「事実」
  2.3 事例記述者と読み手が意味を共有するための「解釈の前提」である「客観主義的規範」
  2.4 「解釈の前提」を受け入れない場合に現れるもう一つの「事実」
 注
 文献
第四章 「児童相談所一時保護所」における「階層秩序的アプローチ」による危機管理的な援助実践の経過
 1 「児童相談所一時保護所」の概要と研究方法
  1.1 「児童相談所一時保護所」の概要
  1.2 研究方法
 2 「児童相談所一時保護所」における「F児像」
  2.1 F児の「ケースファイル」と「個人記録」
   2.1.1 保護に至った経緯を示すケースファイル
   2.1.2 一時保護所内でのF児の様子を示す個人記録
  2.2 二つの記録から読み取れる「F児像」への疑問点
 3 F児の援助過程に働く「客観主義的規範」
  3.1 否定性の中の肯定的な記述
  3.2 「切り離し作業」
 4 「客観主義的規範」により生み出された「階層秩序的アプローチ」の援助過程
  4.1 階層的な「福祉制度」の中の「児童相談所一時保護所」
  4.2 「一時保護所」の中の秩序維持方法
  4.3 「階層秩序的アプローチ」により促される“親子の権利を無視する可能性”
 5 「児童相談所一時保護所」の危機管理的な援助実践
 注
 文献
第五章 「A市子育て支援センター」の事例報告の言説分析
     ―援助過程において働く「主観的規範」―
 1 事例報告原文の紹介
 2 事例報告の言説分析
  2.1 事例記述者が暗黙裡に示す「読み方の指示」
  2.2 事例記述者が描こうとした「事実」
   2.2.1 問題の認識
   2.2.2 母親からの告白とスタッフが行った援助
   2.2.3 後日談として描かれるスタッフの対応の結果
  2.3 事例記述者と読者が意味を共有するための「解釈の前提」
  2.4 「解釈の前提」を受け入れない場合に現れるもう一つの「事実」
 注
 文献
第六章 「A市子育て支援センター」における「間主観的アプローチ」により主体形成が可能となる援助実践の経過
 1 「A市子育て支援センター」における母親Bへの援助実践
  1.1 母親Bの事例概要
  1.2 初来所時の母親Bの様子
   1.2.1 母親Bの言動
   1.2.2 スタッフの行動
   1.2.3 スタッフによる母親Bの言動に対する理解
   1.2.4 筆者の考察
  1.3 母親Bが定期的に通所し始めるまでの様子
   1.3.1 母親Bの様子
   1.3.2 スタッフの行動
   1.3.3 スタッフによる母親Bの言動に対する理解
   1.3.4 筆者の考察
  1.4 「A市子育て支援センター」職員の他機関との連携
   1.4.1 母親Bの行動
   1.4.2 スタッフの行動
   1.4.3 スタッフによる母親Bの言動に対する理解
   1.4.4 筆者の考察
  1.5 母親Bの定期的な通所と行動範囲の拡大
   1.5.1 母親Bの行動
   1.5.2 スタッフの行動
   1.5.3 スタッフによる母親Bの言動に対する理解
   1.5.4 筆者の考察
  1.6 母親Bの行動範囲の「A市子育て支援センター」の外への拡大
   1.6.1 母親Bの行動
   1.6.2 スタッフの行動
   1.6.3 スタッフによる母親Bの言動に対する理解
   1.6.4 筆者の考察
  1.7 母親Bの自立
   1.7.1 母親Bの行動
   1.7.2 スタッフの行動
   1.7.3 スタッフによる母親Bの言葉と行動の捉え方
   1.7.4 筆者の考察
 2 B親子の援助過程に働く「主観的規範」
  2.1 「母親Bの言葉」と「スタッフ所感」の並列記述から見出される親子とスタッフの対等な関係
  2.2 「親子の関係性」を捉える記述が生み出す関係性に応じた援助対象の理解
 3 「主観的規範」から生み出される「間主観的アプローチ」の援助過程
  3.1 「親子の居場所」が与えている記述への影響
  3.2 「間主観的アプローチ」により克服される“信頼関係を利用しあう可能性”
 4 母親Bの告白の変化からみる「A市子育て支援センター」における主体形成能力
  4.1 物語論的自己と他者の関係
  4.2 「他者」像(規範)の再構成による主体性の獲得
   4.2.1 母親Bに対する援助経過の概要
   4.2.2 母親Bにとっての「他者」との関係の変化
 注
 文献
第七章 「S子育て支援センター」における援助実践の経過
 1 「S子育て支援センター」の概要と研究方法
  1.1 「S子育て支援センター」の概要
  1.2 「S子育て支援センター」の研究方法
 2 「S子育て支援センター」のスタッフにより記述された記録の分析
  2.1 主客未分な記述
  2.2 継続性のない記述
  2.3 「S子育て支援センター」の「階層秩序的アプローチ」の援助過程
 3 「S子育て支援センター」において「階層秩序的アプローチ」による援助過程が生じる理由
  3.1 元保育士としてのスタッフ個人の意識
  3.2 責任を持たされない組織のあり方
 注
第八章 現代社会における「親子の居場所」創出過程の意味
 1 近代社会の専門性との比較から見た「親子の居場所」創出の「専門性」
 2 「親子の居場所」創出による主観主義的援助の成立n難しさ
 3 「親子の居場所」の「公共圏」の一種である「親密圏」としての政治的可能性
 注
 文献
第九章 「親子の居場所」創出の過程
 1 「親子の居場所」創出の過程
 2 今後の課題
 注
 文献
付録―資料編
 Ⅰ 児童相談所の事例
 Ⅱ 社会福祉制度の階層化されたシステム
 Ⅲ リスクアセスメント表の実際の使用方法
謝辞 
著者松永愛子 著
発行年月日2012年05月15日
頁数346頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-1886-1