近代教育黎明期における健康教育の研究
教育と医学の融合による健康教育の始まり
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序章 問題の所在と課題
第1節 わが国最初の保健教科
1.1872(明治5)年「学制」の「養生法」への研究視点の欠如
2.問題の所在
第2節 課題と論文構成
1.課題の設定
2.論文の構成
3.使用用語について
第Ⅰ章 「学制」以前の医学教育
第1節 文部省設置以前の医学教育の系譜
1.伝統的漢方医学の中で弾圧されつづけた西洋医学
1)実証医学の幕開け『蔵志』と『解体新書』
2)シーボルトの鳴滝塾と再禁止となった西洋医学
3)西洋医学禁止令の解除
①蘭方医の奥医師採用
②幕府公認の西洋医学教育―医学所における本格的西洋医学教育―
2.まとめ
第2節 文部省の設置と医学関係者
1.洋学学習を先駆した医学教育―医学所の復興から大学東校の開校へ―
2.文部省の設置―新しい教育制度の着手―
1)文部省と編纂寮の構成員
2)教科書松本良順『養生法』と『健全学』の選定
3.まとめ
第3節 近代医学導入の主導者松本良順―近代衛生学の始まりと『養生法』の意図―
1.松本良順と西洋医学の出会い
1)良順の経歴と西洋医学習得への熱意
2)ポンペの医学伝習―初めての体系的西洋医学教育―
①長崎の医学伝習までの道
②体系的西洋医学教育の開始
③長崎「伝習所」での医学教育実践
④ポンペ・良順の医学伝習の評価
2.松本良順の西洋医学教育定着への意志
1)医学所の改革
2)良順の門弟たち
3.まとめ
第4節 『養生法』に込められた近代衛生学開明の意図
1.日本人の著した最初の西洋衛生書
1)『養生法』の幕末養生書における位置と評価
2)一般庶民の登場―良順の万人のための医療思想―
3)貝原益軒の養生観の否定―近世的養生観からの決別―
2.西洋衛生学の実際―近代的衛生観―
1)環境衛生として把握された住居環境
①住居
②厠及び屎尿の処理
2)近代的個人衛生
①衣服
②飲食
③煙草
④浴場・睡眠
3)公衆衛生―房事と梅毒検査―
4)病気の抵抗力と捉えた運動―運動を実動と虚動に峻別―
3.まとめ
第Ⅱ章 近代学校教育における近代的「養生法」の導入
第1節 「学制」第27章「養生法」について
1.「養生法」の位置付け
1)保健教育の変遷
2)「養生法」及び「体術」の設置の経過
①教科設置の推移―一貫して存在した「養生法」―
②師範学校教則における養生教育と体操
③「体術」「体操」の設置経過とその内容―「医療体操」からはじまった体操―
3)米国学則に存在した「健康術」
4)伝統的「養生論」の存在
2.まとめ
第2節 「養生法」設置の背景と経緯
1.歴史的転換の中で教育が指向したもの―徹底を期した西洋教育導入―
2.歴史的転換の中で求められた人間観・身体観
1)「学制布告書」にみる人間観―功利的身体観の存在―
2)「修身書」にみる身体観
3)「生徒心得」にみる人間観
3.文部省・学生取調掛の「養生」教育に対する認識
1)文部省当局の「養生」教育に対する認識
2)学生取調掛の「養生」教育に対する認識
3)西潟訥の「養生法」設置の説明
4.学生取調掛の2名の西洋医学者の存在―近代医学確立の使命を担った岩佐と長谷川―
5.まとめ
第Ⅲ章 近代学校草創期における「養生教育」の実際―府県教則および養生教科書について―
第1節 近代学校草創期各府県教則に示された「養生教育」
1.学制期全国府県教則中の「養生教育」
1)第1期の各府県教則中の「養生教育」
2)第2期の各府県教則中の「養生教育」
3)第3期の各府県教則中の「養生教育」
2.官立師範学校教則の独自性
3.学制後期と教育令期の「養生教育」―自由教育推進と「養生教育」の充実―
4.まとめ
第2節 近代的養生教科書による「養生教育」
1.「人体問答」による養生教育
1)師範学校教則に出現した庶物指教としての「人体ノ部分問答」
①「人体問答」教科書の刊行数とその特徴
②「人体問答」教科書にみる趣旨と教授法
③凡例,緒言にみる「人体問答」教育の趣旨と教授法
④「人体問答」教科書の内容
2.近代教育草創期の養生教科書
1)養生教科書の出版状況と種類
2)養生教科書の特徴
①初期に刊行された養生教科書の特徴―「養生法」の教科書として刊行された『啓蒙養生訓―
②初学用に刊行さらた養生教科書
③「口授」「養生談」の教科書
④もっとも多く翻訳されたカットルの生理衛生書
3)他の教科書にみる養生教育内容
3.まとめ
第Ⅳ章 <身体・健康>教育の展開基盤―「養生法」以外の<身体・健康>
第1節 田中義廉編『小学読本』による<身体・健康>教育
1.『小学読本』とウィルソン・リーダー
1)田中義廉編『小学読本』の養生内容と先行研究
2)ウィルソン・リーダーについて
①ウィルソン・リーダーの採用経緯
②ウィルソン・リーダーの内容構成
③ウィルソン・リーダーと『小学読本』との対応箇所
2.『小学読本』とウィルソン・リーダーとの対照分析
1)『小学読本』中の健康内容分析
①『小学読本』の文章構成法の確定
②『小学読本』の内容対照分析
2)近代的発育発達観の受容
①「子どもの発育発達」への医学的接近
②福沢諭吉の「学校」と「遊園」の紹介
③医学と教育の接近
3)『小学読本』巻之五の健康内容とウィルソン・リーダーとの対応箇所
3.田中義廉の近代的教科書創りの意図・方法
1)田中義廉の訳述編集方法の分析―日本的な教科書創りへの工夫―
2)『小学読本』による新教育理念の提示―オリジナル課の配置と内容―
3)田中義廉の抽出した「身体の教育」―「The Play-Ground」の着目と最初の選択―
4)田中義廉の医学者としての視点
①田中義廉の経歴
②田中義廉の教科書出版
4.まとめ
第2節 「文部省刊行雑誌」に掲載された<身体・健康>教育記事
1.「文部省刊行雑誌」について
1)「文部省刊行雑誌」の刊行意図とその変遷
2)『文部省報告』第23号の「教育及衛生」について
2.<身体・健康>記事分類
1)<身体・健康>記事分類と先行研究
2)佐藤及び今村の<身体・健康>記事比較
①佐藤秀夫の<身体・健康>記事数
②今村嘉雄の調査と先行研究との検討
3.<身体・健康>記事内容の検討
1)<身体・健康>に関する特徴的記事
①最初の教育記事「生徒養生ノ法」及び学校建築関連記事
②自然教育法による<身体・健康>教育の紹介
③学校教育に潜む健康被害への警鐘と対策
④健康養生体操
⑤「学校衛生」記事の初出
⑥その他の記事
4.まとめ
第3節 開成学校における近代的<身体・健康>教育・管理実践
1.フルベッキと<身体・健康>教育・管理実践
1)フルベッキの南校教頭就任と,EZの<身体・健康>教育・管理実践
①フルベッキと長崎の医学伝習との関係
②フルベッキの「建議書」にみる<身体・健康>観
2.「生徒養生ノ法」の近代性とその出典について
1)「生徒養生ノ法」の出典をめぐって
①松本良順『養生法』との関連
②杉田玄端訳『健全学』との関連
③辻恕介抄訳『扶氏長生法』との関連
④緒方惟準編輯『衛生新論』との関連
⑤鈴木良輔訳『養生新編』との関連
⑥土岐頼徳纂輯『啓蒙養生訓』との関連
⑦松本良順の影響力―良順の記述手法と「生徒養生ノ法」―
3.大学南校から東京開成学校の規則にみる<身体・健康>教育・管理実践
1)「生徒心得」「舎則」にみる<身体・健康>関連規則―医局・医官と病舎の存在―
2)正課授業における「体操」実施―近代学校の象徴としての「体操」―
4.まとめ
終章 近代教育草創期の<身体・健康>教育の存在
第1節 「学制」第27章「養生法」設置を可能とした背景
1.近代医学導入と松本良順の存在
1)医学者の子どもの<身体・健康>教育への関与
2)松本良順『養生法』の意義
第2節 近代教育思潮と子どもの<身体・健康>教育―近代の教育と医学の融合による健康教育の誕生―
1.ペスタロッチの調和的人間感性論に基づく「身体の教育」
1)文部省の意図以上の養生教育の広がり
2)田中義廉編『小学読本』による近代教育概念の提示
3)「文部省刊行雑誌」にみる<身体・健康>教育
4)健康形成を主眼とした「身体の教育」
2.まとめ
第3節 近代教育草創期の養生(保健)教育の存在
第4節 今後の課題
子どもの<身体・健康>教育の変質
おわりに
主要参考文献
資料
あとがき