源氏物語の婚姻と和歌解釈
定価:
13,200
円(本体
12,000
円+税)
- 目次を表示します。
-
Ⅰ 平安朝文学と婚姻制度
第一章 源氏物語の「幸ひ」「幸ひ人」をめぐって
―幸運を世間にうらやまれた女性たち―
一 はじめに
二 源氏物語の「幸ひ人」
1 紫の上
2 明石の尼君と明石の君
3 宇治の中の君
4 浮舟
三 「幸ひ人」についての研究史
四 歴史物語の「幸ひ人」
五 「さいはひ」と「女のさいはひ」
六 実母と養母―明石の君の場合―
七 白氏文集新楽府「塩商婦」と「幸人」
第二章 紫の上に対する呼称―「対の上」の用法―
一 はじめに
二 対の上という語
三 対の上の立場
四 呼称の意図
第三章 鬚黒大将の離婚と再婚―式部卿宮娘と玉鬘―
一 はじめに―平安時代の結婚制度―
二 鬚黒大将の離婚と再婚
1 鬚黒と北の方との結婚のいきさつ
2 鬚黒大将は北の方と別れたがっている
3 鬚黒大将、玉鬘に通い始める
4 玉鬘とは未だ忍び通う仲
5 鬚黒大将、北の方との離婚を模索する
6 北の方を遠ざける口実ができた
7 父宮の決定の重さ
8 鬚黒大将と父宮との交渉
9 玉鬘と北の方のその後
三 物語と法的制度
第四章 平安朝貴族の結婚と源氏物語―物語と歴史の間―
一 はじめに―辻本論文の批判に応えて―
二 研究史への対応の仕方
三 辻本論文の個々の論点
1 検討の前提―物語の資料価値
2 女三宮降嫁と雲居雁の立場
3 鬚黒大将と玉鬘と元の北の方
4 夕霧と落葉宮
5 官位の昇進と妻・妾の差
6 嫡子の叙位
四 一夫一妻の社会規範は何に起因するか
第五章 平安時代の倫理・道徳と源氏物語―再婚をめぐって―
一 はじめに
二 規範としての「義夫・節婦」
1 義夫は旧きを棄てず
2 家長としての義務を放棄するとき―源経相の場合
3 「節婦」は再婚せず
三 再婚する男女
1 女の再婚
2 再婚する男―藤原長家の場合
3 軽蔑を招く棄妻と再婚―藤原朝光の場合
四 おわりに
第六章 師輔集の中の婚姻―内親王との交渉をめぐって―
一 恋の和歌は誰と詠み交わすか
二 師輔集に残される恋の歌―盛子と三人の内親王―
北の方藤原盛子 勤子内親王 雅子内親王 康子内親王
三 師輔と内親王との〈結婚〉―内親王降嫁の内実―
第七章 蜻蛉日記「さいはひある人のためには」の解釈
―道綱母における幸運と不運の意識―
一 はじめに
二 これまでの解釈
三 さいはひある人のためには
1 「さいはひある人」とはいかなる人か
2 「ためには」
四 「さいはひある人」と「さいはひなき人」
第八章 蜻蛉日記天禄二年条本文改訂試案
―「三夜」「十夜」の解釈を離れて―
一 はじめに
二 原文と改訂案
三 「ると、ちぐさに」は「など、ちぐさに」
四 「とよ」は「十夜」に非ず
五 「きくところ」と「にくどころ」
六 「なんよつ」は「などかく」
七 蜻蛉日記本文改訂―恣意と合理の間で
第九章 婚姻制度と文学―その後の研究の現状と問題点―
一 はじめに
二 平安時代の婚姻制度についての理解―私の立場―
三 日中制度比較の方法―胡潔の批判―
四 呼称と実態―関口・服藤の実態理解―
五 物語学のために―藤井貞和批判―
六 おわりに―制度と文学―
Ⅱ 源氏物語の和歌解釈
第一章 夕顔巻「心あてに」「寄りてこそ」の和歌解釈―語義と和歌構文―
一 はじめに
二 「心あてに」の和歌をめぐって
1 「心あてに」の語義―古今和歌集二七七番歌の解釈
2 心あてにそれかとぞ見る
3 躬恒の歌との関連―「それ」が指すもの
4 白露の光そへたる夕顔の花―寓意は何処にあるか
5 詠歌の事情―女から呼びかけた歌ではない
三 「寄りてこそそれかとも見め」の和歌をめぐって
四 おわりに
第二章 夕顔巻「心あてに」の和歌解釈再論―「それ」が指すもの―
一 はじめに
二 「心あてに」の和歌解釈の検討
1 何が問題か
2 歌の文脈と場の文脈
3 和歌構文と和歌の解釈
4 指示語としての「それ」のはたらき
5 「それ」の和歌構文
三 物語の和歌の解釈のために
第三章 夕顔巻「花に心をとめぬとぞ見る」の和歌解釈―打消と完了の「ぬ」―
一 解釈の問題点
二 注釈史―打消説と完了説の流れ―
三 構文と文法
1 「AにてBと知る(見る)」の構文
2 おおやけごとにぞ聞こえなす
3 論理の整合性と打消しと完了
四 詠歌の意図
第四章 紅葉賀巻「袖ぬるる」の和歌解釈―文法と和歌構文―
一 解釈の問題点
二 「ぬ」完了説の論拠
三 「ぬ」打消説の論拠
四 構文的検討
1 「と思ふにも」について
2 「なほ」のはたらき 3 四句切れの和歌
五 藤壺の和歌の解釈
六 寓意の問題
第五章 真木柱巻と若菜上巻の「深山木に」の和歌解釈―比喩をめぐって―
一 「み山木に羽うちかはしゐる鳥」の比喩の問題点
二 「はねうちかはし」「ねたし」の語義
三 「みやまぎ」について
四 若菜上巻「深山木にねぐら定むる箱鳥」の比喩の問題点
五 比喩の当否
六 おわりに
第六章 鈴虫巻「わが宿からの」の和歌解釈―弁解の表現―
一 問題の所在
二 自分のことを言う返歌
―「みづからの御事は此の御返しによしなく」の検討―
1 お詫びの言い方―下位から上位へ
2 光源氏たちの挨拶の仕方
3 源氏の返歌は無沙汰の弁解・お詫び
三 昔今の御有様は誰の有様か―「次なる語にもかなはず」の検討―
1 「同じ雲居」の語義
2 「御有様」は源氏の有様
四 月に催される懐旧の情
五 源氏物語における月と懐旧
六 おわりに
第七章 源氏物語の和歌における「両義的」解釈をめぐって
一 はじめに
二 「なほうとまれぬ」についての上原作和の解釈
三 上原の拙論批判の論点
四 解釈の立場―解釈における「正解」ということ―
五 上原作和の再説について
六 両義的解釈の当否―クリステワの挙例は両義的解釈の根拠たりうるか―
七 諸解釈の対立と両義的解釈の発生
八 おわりに
第八章 試みがてら逢ひ見ねば―蜻蛉日記と源氏物語の引歌一首―
Ⅲ 紫式部集注解
第一章 宣孝関係とされる歌の再検討
はじめに
一 三六・三七番―花の歌群―
1 問題の所在―はたして宣孝と紫式部の新婚時代の和歌か
2 寓意はあるか
3 桜・桃・梨―花の歌群
4 詠歌の場の推定
二 四〇・四一番歌―哀傷の歌群の始まり―
1 問題の所在―紫式部は薄鈍を着ていたか
2 夫の喪に「うすにび」を着るか
3 「薄鈍」を着ているのは誰か
4 薄鈍を着ているのは紫式部ではない
5 可能性として
6 哀傷の歌群
三 四二・四三番歌―哀傷の歌群の続き―
1 問題の所在―贈答の相手ははたして宣孝の娘か
2 四二番の作者は誰か―詞書からの推定では娘
3 「鴛鴦の子の跡」を見る―和歌からの推定では作者は娘ではない
4 本文改訂の可能性
5 四三番歌の解釈
6 亡き人は娘の母親であろう
四 おわりに
第二章 紫式部集注釈不審の条々
一 五五・五六番歌―本文からの逸脱―
1 問題点―詞書の解釈
2 詞書の解釈―試みの解釈
3 五五番歌の解釈
4 依拠すべきは本文
二 一〇二番―弁解の掛詞―
1 問題点―「さしこえて」の語義
2 「さしこえて」の語義の検討
3 返歌の意図
三 一一三番―助詞・助動詞の軽視―
1 問題点―文法と語義
2 「うちとく」の語義
3 「を」の存在
4 「ひとこと」に宛てる漢字
5 「む」の用法と「ひとこと」の語義
6 返歌の意味
四 一一六番―本文校訂の是非―
1 問題点―本文校訂は必要か
2 時雨は晴雨定まらず降る
3 詠歌時の天候
4 「くまもなく」が合理的な本文
五 一二二番左注―語義と詠歌状況―
1 問題点―紫式部の歌への思いこみ
2 「おほやけこと」の語義
3 おほやけ言の和歌
六 おわりに
初出一覧
索引
あとがき