博士論文・心理学・教育学など書籍・学術出版社|(株)風間書房

ESD〈持続可能な開発のための教育〉と自然体験学習

サステイナブル社会の教職教育に向けて

定価: 9,350 (本体 8,500 円+税)

「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development=ESD)」運動におけるその一形態としての自然体験学習とこの学習を支える環境教育(理論と実践)のあり方を、思想、実践史、指導者育成、法制度・教育計画など多角的な視点から示した。

【著者略歴】
降旗信一(ふりはた しんいち)
1962年生まれ、1981年に日本ナチュラリスト協会の夏季自然教室(長野県後山地区)に参加して以来、日本ネイチャーゲーム協会、日本環境教育フォーラム、自然体験活動推進協議会、持続可能な開発のための教育の十年推進会議(ESD‐J)などのスタッフ・役員として、環境教育・自然体験学習・ESD実践にかかわる。東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了、博士(学術)。社団法人日本ネイチャーゲーム協会(現公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会)理事長、カリフォルニア州立大学ソノマ校客員研究員、鹿児島大学産学官連携推進機構特任准教授を経て、現在、東京農工大学大学院農学研究院・准教授。日本環境教育学会編集委員長(2009~2011)、同国際交流委員長(2011~2012)、環境思想・教育研究会環境教育思想研究委員長(2012~現在)。
※略歴は刊行当時のものです※
目次を表示します。
まえがき
序章 持続可能な社会のための自然体験学習へ―本書の課題・方法と構成―
 序-1.現代自然体験学習論の射程
 序-2.ESD(持続可能な開発のための教育)の思想的起源と今日的課題
 序-3.本書の課題・方法・構成―「持続可能か地域づくり」に向けた自然体験学習のビジョン―
第一部 「ESDと自然体験学習」の思想的アプローチ
第1章 現代自然体験学習の思想―experienceの理解を軸に―
 1-1.「自然の中で行なう体験学習」の検討
 1-2.「自然の中で行なう体験学習」の意義と課題
 1-3.「自然体験を通した学習」におけるexperienceの捉え方
  (1)「体験」と「経験」を区別する意義
  (2)応答的関係性としての経験
  (3)自然への肯定的世界観
 1-4.「経験」概念の思想的変遷―カント、ヘーゲル、進化論的認識論をめぐって―
  (1)「経験」概念の思想的変遷
  (2)進化論的認識論と「生物の主体性」
 1-5.応答的世界観をもった共生・協同の地域づくりへ
第2章 環境思想における「教育」の位置づけをめぐる考察―J・ロックの所有・共有地概念に着目して―
 2-1.「環境」と「教育」の関係の思想的理解に向けて
 2-2.近代公教育制度における「環境(自然)」をめぐる言説
 2-4.近代的「所有」概念における自然と人間の関係性―J・ロックの所有論・共有地論をめぐって―
 2-5.ロックの「所有」「共有地」概念とESDの課題
第3章 ESD・環境教育実践としての「食農体験学習」の思想的考察
 3-1.食と農の教育をめぐる今日的論点
 3-2.ESD・環境教育の射程
 3-3.環境保全の農業と生命維持の食生活との融合をめざす食農教育の理念
 3-4.子ども農山漁村交流プロジェクトの可能性と課題
 3-5.現代自然体験学習における自然認識をめぐる考察―カント、ヘーゲルからカント、ルソー、マルクスへ―
 3-6.持続可能な地域づくり教育としての食農体験学習の展望
第二部 「ESDと自然体験学習」の実践史論的アプローチ
第4章 現代自然体験学習の源流としての自然保護教育実践におけるESD的視点の検討―1970年代のナチュラリスト運動に着目して―
 4-1.1970年代~80年代の自然保護教育実践におけるESD的視点の検証
 4-2.自然保護教育実践としてのナチュラリスト運動
  (1)運動の成立と発展
  (2)自然保護教育が目指す理想の人間像としての「ナチュラリスト」
 4-3.自然保護教育の方法論をめぐる日本ナチュラリスト協会の実践
  (1)日本ナチュラリスト協会の自然観察会
  (2)自然観察の方法論をめぐる研究活動の変遷
  (3)農村の暮らしを重視する自然保護村としてのナチュラリストエリア(村)構想
  (4)ニホンカモシカ調査活動を通した自然保護教育の展開
 4-4.1970年代から80年代にかけての自然保護教育の方法論的特徴
  (1)学習原理としての「観察」と「体験」の方法論的統一
  (2)青少年育成と一般市民の指導者養成を通した実践主体の育成の取り組み
  (3)自然保護教育の職業としての確立
 4-5.社会教育・生涯学習実践としての自然保護教育の到達点
 4-6.ナチュラリスト運動におけるESD的視点
第5章 ESD・環境教育実践としてのネイチャーゲームの課題と可能性
 5-1.ESD・環境教育実践としてのネイチャーゲーム
 5-2.ネイチャーゲームの思想的起源
  (1)ジョセフ・コーネルの思想と実践
  (2)日本ナチュラリスト協会の思想と実践
  (3)コーネルと日本ナチュラリスト協会の出会い
 5-3.ネイチャーゲームの歴史的展開過程
  (1)第1期「導入期」
  (2)第2期「模索期」
  (3)第3期「指導者養成期」
  (4)第4期「普及組織養成期」
  (5)第5期「法人活動充実期」
  (6)第6期「持続型地域社会創造推進期」とその後の展開
 5-4.学習の構造と変容
  (1)定型教育としてのネイチャーゲーム
  (2)不定型教育実践としてのネイチャーゲーム実践
  (3)非定型教育としてのネイチャーゲーム実践
 5-5.自然体験学習とESDをつなぐネイチャーゲームの可能性と課題
第6章 持続可能な地域づくりに向けた共生教育の展望―農山漁村での取組みにふれつつ―
 6-1.「持続可能性と教育」をめぐる研究の課題と方法
 6-2.共生型社会における「教育」の意味
  (1)現代教育改革は共生型社会を生み出すのか
  (2)共生型社会をつくる地域の教育力
 6-3.農山漁村における共生教育実践を支える構造
  (1)住民主体の公共的協同的学習組織をめざす北海道・浜中霧多布実践
  (2)自律・自治力を高める山村留学事業を追求する長野県・泰阜実践
  (3)大学と地域の協働による実践組織づくりをめざす鹿児島県・垂水大野実践
 6-4.農山漁村における地域共生教育実践の特長と課題
  (1)「地域づくり、まちづくり」としての展望
  (2)農山漁村における地域共生教育実践の課題
第三部 「ESDと自然体験学習」の指導者論的アプローチ
第7章 自然体験活動リーダー共通登録制度における社会教育・生涯学習団体の課題
 7-1.自然体験学習における「指導者・専門職員」研究の課題と方法
 7-2.環境教育指導者・専門職員の養成の変遷
  (1)初期の環境教育指導者・専門職員養成
  (2)市民運動戦略としての指導者養成
  (3)環境政策としての指導者養成
  (4)民間団体による専門職員養成の取り組み
 7-3.「自然体験活動指導者」に至る歴史的背景
  (1)2つの源流における自然体験活動指導者
  (2)「大人の学び」としての自然体験活動指導者
  (3)専門職員としての自然体験活動指導者
 7-4.「自然体験活動指導者研究会」の理念と方法
  (1)研究会発足の経緯とよびかけ
  (2)自然体験活動指導者研究会の研究活動
 7-5.リーダー共通登録制度をめぐる社会教育・生涯学習の今日的課題
第8章 自然体験学習の地域指導者の現状と課題
 8-1.自然体験学習の「指導者・専門職員」の資質・力量をめぐる研究の課題と方法
  (1)課題の背景
  (2)調査仮説の設定―指導者の専業度と活動地域をめぐる相克―
 8-2.学校外教育における自然体験学習の地域指導者の活動実態
 8-3.専業度差と活動地域差をめぐる意識の差
 8-4.自然体験学習の地域指導者に求められる資質と力量
 8-5.自然体験学習の地域指導者育成の課題
第9章 農山漁村における自然体験学習専門職員養成カリキュラムの課題―北海道厚岸郡浜中町立霧多布湿原センター職員の分析から―
 9-1.自然体験学習の専門職員養成研究の課題と方法
  (1)研究の背景
  (2)カリキュラム研究の到達点
  (3)研究方法と対象
 9-2.調査対象の概要と指導者・専門職員の採用・配置・研究の状況
 9-3.専門職員として求められる資質・力量
 9-4.指導者・専門職員としての資質・力量形成の過程
 9-5.指導者・専門職員養成カリキュラム策定の課題
第四部 「ESDと自然体験学習」をめぐる法制度と計画論的アプローチ
第10章 自然体験学習における地域づくり主体形成の拠点
 10-1.持続可能な地域づくり教育計画論の課題と方法
 10-2.調査地域のプロフィール
  (1)自然的地理的環境条件
  (2)人口減少と地域経済の課題
  (3)財政の状況
 10-3.環境教育における地域づくり主体形成拠点の成立過程
 10-4.地域づくり主体形成拠点と地域における公共的学習支援システム
  10-4-1.青少年の環境学習を支える公共的学習支援システム
   (1)学校教育と拠点との連携を支える教育委員会事業
   (2)学校外教育としての「子ども自然クラブ」
  10-4-2.生産者組織の環境保全活動を支える公共的学習支援システム
   (1)農協とNPOの連携による地域環境保全活動における拠点の役割
   (2)漁協の環境保全活動における連携と課題
  10-4-3.NPO職員の力量形成における地域づくり主体形成拠点の意義
 10-5.自然系環境教育と地域経済とを相互応答的な関係性の構築に向けて
第11章 食農体験学習から「農と共生の教育共同体」の創造へ―韓国・プルム実践を支える〈農〉と共生の教育思想にふれつつ―
 11-1.食農体験学習をめぐる地域づくり論の課題と方法
  (1)学校教育における食農体験学習の現状
  (2)農村から見た食農体験学習への期待と課題
  (3)食農体験学習を契機とする地域教育構想と本章のねらい
 11-2.教育共同体とは何か
  (1)近代的共同体=市民社会=協同体論としての「新しい共同体」論
  (2)共生型共同体における教育的意義
 11-3.農と共生の教育共同体実現へのアプローチ
  (1)子どもと大人がともに育ちあう共同の関係づくりとしての「地域の教育力」
  (2)地域住民の手による「市民立学校」づくり
 11-4.学校→住民アプローチ型の教育共同体づくりとしてのプルム実践
  (1)プルム学校の教育理念
  (2)韓国学校教育制度におけるプルム学校の位置づけ
  (3)「学校→住民アプローチ型」教育共同体づくりとしてのプルム実践
 11-5.「農と共生の教育共同体」構想の展望と課題
第12章 韓国農村における共生型教育共同体の現状と課題―「学校から住民への貢献アプローチ型」教育共同体としてのプルム学校の特徴―
 12-1.共生型教育共同体論の射程
 12-2.韓国における代案学校運動とプルム学校
 12-3.洪東地域における地域づくり計画とプルム学校の役割
  12-3-1.地域の農業と地域づくり共同体の発展
  12-3-2.21世紀文堂里発展百年計画とプルム学校の位置づけ
  12-3-3.地域住民からみた百年計画とプルム学校
 12-4.共生型教育共同体における学校教育の展開―「地域からまなぶ」高等部と「地域にかえす」専攻部―
  12-4-1.洪東地域の学校等機関とプルム高等農業技術学校(高等部)
  12-4-2.「地域に根付く平民大学」としてのプルム高等農業技術学校専攻部
 12-5.結論と今後の調査課題
第13章 ESD・環境教育をめぐる法制度の現状と課題
 13-1.環境にかかわる教育法研究の課題と方法
 13-2.環境保全活動・環境教育推進法の特徴とその問題点
  (1)環境保全活動・環境教育推進法の成立プロセス
  (2)環境保全活動・環境教育推進法の全体像と目的・定義
  (3)環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本方針
  (4)人材認定等事業の登録と情報の収集、提供等
 13-2.教育関連法、社会教育・生涯学習関連法としての課題
  (1)環境教育を受ける権利を保障する法・制度になっているか
  (2)市民・住民の学習を通した地域づくり教育の視点
 13-4.環境保全活動・環境教育推進法における今後の検討課題
終章 環境思想における「発達の教育学」をめぐる考察―3.11後のリジリアンス学習に着目しつつ―
 終-1.東日本大震災の復興をめぐる教育的議論
 終-2.戦後教育学における「発達の教育学」の問題意識
 終-3.学習理論とリジリアンス
 終-4.3.11後のリジリアンス学習
  (1)被災地のリジリアンス学習
  (2)被災地外でのリジリアンス学習
 終-5.まとめ
事項索引
人名索引
初出一覧
あとがき
著者降旗信一 著
発行年月日2014年02月20日
頁数330頁
判型 A5
ISBNコード978-4-7599-2026-0
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